グレイス&グラティチュード

オリビア・ニュートン＝ジョン『グレイス&グラティチュード』解説

『グレイス&グラティチュード』（Grace and Gratitude）は、世界的に愛される歌手、オリビア・ニュートン＝ジョンによって2006年に届けられた、彼女にとって22枚目のスタジオ作品です。このアルバムは、そのタイトルが示す通り、「優美さ」と「感謝」という、彼女の音楽キャリアの中でも特に内省的で精神的な側面を深く探求した内容となっています。

本作のリリースには特徴的な経緯がありました。最初に2006年に発表された際は、アメリカ合衆国のドラッグストアチェーンであるウォルグリーンの店舗限定で販売されるという、異例の形態が取られました。その後、より多くのリスナーに届けられるよう、内容がリニューアルされたバージョンが2010年に改めてリリースされています。日本国内で公式に販売された盤は、この2010年のリニューアル版に基づいたものとなっており、追加された楽曲や構成で楽しめるようになっています。

アルバムの核となるタイトル曲「Grace and Gratitude」は、リリース以降の彼女のコンサートツアーにおいて、フィナーレを飾る楽曲として繰り返し演奏され、ファンにとって特別な意味を持つ曲として定着しました。その感動的なメロディーと歌詞は、聴衆に深い余韻を残すものとして親しまれています。

日本盤に収録されている楽曲は、リニューアル版に準拠しており、以下のような構成となっています。特徴的なのは、ヘブライ語と思しきタイトルを持つ「インターリュード」（間奏曲）が多数挟まれている点です。これらの短いトラックが、アルバム全体の精神的なテーマをより際立たせています。

シェヒナ〜神殿 (Shekhinah) - インターリュード
パールズ・オン・ア・チェイン (Pearls on a Chain)
イェソドゥ〜礎 (Yesod) - インターリュード
トゥ・ビー・ウォンテッド (To Be Wanted) - マーク・マズリをフィーチャー
ホドゥ〜栄光 (Hod) - インターリュード
ラーン・トゥ・ラヴ・ユアセルフ (Learn to Love Yourself)
ネズァハ〜永遠 (Nezah) - インターリュード
グレイス&グラティチュード (Grace and Gratitude)
ティフェレット〜美 (Tiferet) - インターリュード
ラヴ・イズ・レッティング・ゴー・オブ・フィア (Love is Letting Go of Fear)
ヘセッドゥ-ゲヴラ〜優美に厳格に (Hesed-Gevurah) - インターリュード
ガテ・ガテ〜前進 (Gaté Gaté)
タアラ・ル・バドゥル・アライナ〜月光 (Ta'la al Badru 'Alayna) - インターリュード
レット・ゴー・レット・ゴッド (Let Go Let God)
ビナ〜英知 (Binah) - インターリュード
アイ・ウィル・リフト・アップ・マイ・アイズ (I Will Lift Up My Eyes) - エイミー・スカイをフィーチャー
トーダ〜感謝の祈り (Todah) - インターリュード、デヴィッド・ダーリングをフィーチャー
ヘルプ・ミー・トゥ・ヒール (Help Me to Heal)
ホフマ〜知恵 (Hochmah) - インターリュード
ザ・パワー・オブ・ナウ (The Power of Now)
ケテル〜王冠 (Keter) - インターリュード
インストゥルメント・オブ・ピース (Instrument of Peace) - マーク・ジョーダンをフィーチャー
マジック (Magic) - トレイシー・ヤングによるリミックス
フィジカル (Physical) - トレイシー・ヤングによるリミックス

このように、多数のインターリュードで区切られた楽曲群は、聴く者に瞑想的で穏やかな空間を提供します。また、マーク・マズリやエイミー・スカイといった他のアーティストがゲストとして参加しており、楽曲に彩りを添えています。さらに、彼女の代表曲である「Magic」と「Physical」のトレイシー・ヤングによるリミックスバージョンがボーナストラック的に収録されている点も、ファンにとっては嬉しい要素と言えるでしょう。このアルバムは、オリビア・ニュートン＝ジョンのアーティストとしての深みと、感謝や精神性といったテーマへの関心を色濃く反映した作品となっています。

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