グレンフィディック蒸留所

グレンフィディック：世界を魅了するシングルモルト

グレンフィディックは、スコットランドのスペイサイド地方、ダフタウンに位置するウィリアム・グラント＆サンズ社が所有・製造する、世界的に有名なスコッチウイスキーです。その名はスコットランド・ゲール語で「鹿の谷」を意味し、ボトルには誇り高い牡鹿のシンボルが飾られています。

かつては世界で最も売れたシングルモルトウイスキーとして知られ、数々の国際的なスピリッツコンペティションで輝かしい受賞歴を誇ります。

歴史

グレンフィディック蒸留所は、1886年にウィリアム・グラントによって、フィディック川の流れる渓谷、ダフタウンに設立されました。翌年のクリスマスの日、蒸留器から初めてグレンフィディックのシングルモルトウイスキーが誕生しました。

1920年代、アメリカで禁酒法が施行された時代、グレンフィディックは生産量を増やした数少ない蒸留所の一つでした。禁酒法廃止後、熟成された高品質なウイスキーへの需要が急増し、グレンフィディックは確固たる地位を築き上げました。

1950年代には、グラント一家は蒸留器を維持する銅細工職人や、現在では珍しい専任の樽職人を雇用するなど、組織体制を強化しました。1956年には、ブランドの象徴となる三角形のボトルが誕生しました。

1960年代から70年代にかけて、ウイスキー業界は困難な時代を迎え、多くの小規模な蒸留所が買収や閉鎖を余儀なくされました。そのような状況下で、W・グラント＆サンズは生産量を増やし、積極的な広告キャンペーンやビジターセンターの開設など、多角的な戦略を展開しました。また、シングルモルトウイスキーを独自のプレミアムブランドとしてマーケティングするという画期的な決断を下し、現代におけるシングルモルトウイスキーというカテゴリーを確立しました。

その後、W・グラント＆サンズは、ボトルを筒状の容器やギフト缶にパッケージングしたり、免税市場の重要性を認識するなど、先駆的な取り組みを行いました。これらの市場戦略が功を奏し、グレンフィディックは世界で最も売れるシングルモルトウイスキーとしての地位を確立しました。現在では、世界180カ国以上で販売され、シングルモルト市場の35%のシェアを占めています。

現在、グレンフィディックはウィリアム・グラントから数えて五世代目の子孫によって経営されています。

2014年9月には、W・グラント＆サンズはドランブイを買収しました。買収額は公表されていませんが、およそ10億ポンドと見積もられています。

生産

グレンフィディックウイスキーは、ダフタウンのグレンフィディック蒸留所で生産されています。水源はRobbie Dhu springsです。熟成には、カリブ海のラム樽（21年Gran Reserva）、アメリカのバーボン樽(Ancient Reserve)、スペインのヘレスのシェリー樽など、様々な種類のオーク樽が使用されます。

グレンフィディック蒸留所で使用されている蒸留器は、他と比べて小ぶりな独特の形状をしています。28基ある蒸留器はすべて手作りで、グレンフィディックはそれらを維持する職人を終身雇用しています。

ウイスキーの種類

グレンフィディックは、多様なラインナップを取り揃えています。定番の12年、15年、18年に加え、以下のような特別版・限定版も存在します。

トーステッド・オーク
スノー・フェニックス2010
モルト・マスターズ・エディション
アルティメット38
ヴィンテージ・アンド・プライヴェート・リザーブ
エージ・オブ・ディスカバリーマデイラ・カスク
エージ・オブ・ディスカバリーバーボン・カスク
エージ・オブ・ディスカバリーレッド・ワイン・カスク
セレクト・カスク
リザーブ・カスク
ヴィンテージ・カスク

評価

グレンフィディックのウイスキーは、国際的な酒類コンペティションで常に高い評価を得ています。特に12年、15年、18年、21年の製品は、サンフランシスコ・ワールド・スピリッツ・コンペティションやBeverage Testing Instituteのレビューで高評価を獲得しています。中でも15年熟成のウイスキーは特に評価が高く、サンフランシスコのコンペティションでは2007年から2010年の4年間で3つのダブルゴールドメダルを受賞、Beverage Testing Instituteのレビューでは91点という高得点を記録しています。

大衆文化との関わり

グレンフィディックは、小説「モース警部」シリーズの主人公モース警部や、作者コリン・デクスターが愛したウイスキーとして知られています。

映画『戦争の犬たち』では、クリストファー・ウォーケン演じる主人公が、架空の国Zangaroに赴く際にグレンフィディック10年のボトルを2本携行していました。

アニメ『ファミリー・ガイ』のエピソードでは、犬のブライアン・グリフィンが自殺する前に、グレンフィディックに似たボトルを最後の晩餐として用意していました。

2004年の映画『ホテル・ルワンダ』では、主人公のポール・ルセサバギナが、オギュスタン・ビジムング将軍をグレンフィディックのボトルで買収するシーンがあります。

グレンフィディック・アワーズ

1970年以来、グレンフィディックはイギリスにおける飲料・食料分野の優れた著作や放送を表彰する「グレンフィディック・フード・アンド・ドリンク・アワーズ」を主催しています。

外部リンク

* Glenfiddich Whisky Website（英語）

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