グレーター・ロンドン・カウンシル

グレーター・ロンドン・カウンシル：設立から廃止までの歴史

グレーター・ロンドン・カウンシル（GLC）は、1965年から1986年まで存在したイギリスの大ロンドン地域を管轄した地方自治体です。大ロンドン議会とも呼ばれ、その歴史は、ロンドンの都市行政における重要な一章を刻んでいます。本稿では、GLCの設立から廃止までの経緯、政治的動向、そしてその歴史的意義について詳しく解説します。

設立までの経緯

GLCの設立は、それ以前のロンドン地方自治体の歴史と深く関わっています。1855年から1889年まで存在したMetropolitan Board of Works、そして1888年に設立されたLondon County Council（ロンドン市議会）は、GLCの前身と言える存在でした。これらの機関は、ロンドン市の拡大と発展に伴い、都市管理の課題に対応するために設立されましたが、管轄区域や権限に限界がありました。

1934年以降、ロンドン市議会は労働党が支配しており、1950年代には労働党の議席が圧倒的でした。しかし、その管轄区域はロンドン中心部に限られていました。この状況に対し、保守党はロンドン全体を管轄する新たな地方自治体の設立を提案します。この提案は、拡大するロンドン都市圏の課題に対応し、より効率的な行政を行う必要性から生まれたものでした。

1957年に検討委員会が設置され、数年にわたる議論を経て、1963年のロンドン政府法に基づき、GLCが設立されることになりました。GLCの管轄区域は、ロンドンの各区に加え、ミドルセックス、そしてエセックス、ハートフォードシャー、ケント、サリーの一部を含んでいました。しかし、境界付近の地域では、増税を避けるためにGLCの管轄外にとどまる地域もありました。

政治的動向

1964年のGLC初選挙では、労働党が保守党を上回る議席を獲得しました。しかし、1967年の第2回選挙では、保守党が国政への不満を背景に大勝し、議長も保守党が握ることになります。その後も、保守党と労働党による激しいせめぎ合いが続きました。選挙制度の変更や、社会主義と保守主義の対立といった政治的要因が、GLCの政治状況を大きく左右しました。

特に、1981年の選挙は、保守党のサッチャー政権と労働党左派との対立が鮮明になった選挙でした。増税や大型事業を巡る政策対立が激しく、労働党が僅差で勝利し、ケン・リヴィングストンが議長に就任しました。リヴィングストンの社会主義的な政策は、サッチャー政権との激しい対立を招くことになります。

廃止

リヴィングストンの社会主義政策は、サッチャー政権と真っ向から対立しました。そして、1983年にはGLC廃止の方針が閣議決定されます。1985年の地方自治法は、大きな反対を受けながらも成立し、1986年3月31日をもってGLCは廃止されました。GLCの廃止は、サッチャー政権による地方分権化政策の一環であり、その後の大ロンドン地域行政に大きな影響を与えました。

まとめ

グレーター・ロンドン・カウンシルは、その存続期間こそ短かったものの、ロンドン地方自治体の歴史において重要な役割を果たしました。保守党と労働党の激しい政治闘争、社会主義政策と保守主義政策の対立、そして時代の変化といった要因が複雑に絡み合い、GLCの盛衰を決定づけたと言えるでしょう。GLCの廃止は、イギリスの地方自治制度に大きな転換をもたらした出来事であり、現代のロンドン行政を考える上でも重要な歴史的事件です。2000年以降は、大ロンドン庁（Greater London Authority）が、大ロンドン地域を統括する行政機関として機能しています。GLCの歴史を振り返ることは、現代のロンドン行政、ひいてはイギリスの地方自治制度を理解する上で欠かせないものです。

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