グレート・ウェスタン鉄道6959形蒸気機関車

グレート・ウェスタン鉄道6959形蒸気機関車：改ホールクラスの軌跡

グレート・ウェスタン鉄道（GWR）が製造した6959形蒸気機関車は、貨客両用として活躍したテンダー式機関車です。その設計経緯から「改ホールクラス（Modified Hall Class）」とも呼ばれ、ホール級の改良型として知られています。軸配置はテンホイラー（4-6-0）で、戦時下の厳しい状況下で生まれた名機と言えるでしょう。

誕生の背景：戦時下の苦難と技術革新

1941年、GWRの技師長に就任したフレデリック・ホークスワースは、ホール級の改良に着手しました。第二次世界大戦は、機関車の燃料となる石炭の質を著しく低下させました。従来の高性能を維持するためには、機関車の設計そのものを改善する必要があったのです。ホール級はすでに製造から約40年が経過しており、戦時下の厳しい状況下で、その性能維持は大きな課題となっていました。

ホークスワースは、ホール級の外観を維持しつつ、フレーム構造、シリンダー、過熱器など、多くの部分を改良しました。最大の特徴は、従来のバーフレームからプレートフレームへの変更です。これにより強度が増し、メンテナンスの容易性も向上しました。さらに、より大きく、より高温の蒸気を生成できる新型過熱器を採用。石炭の質の低下に対応するため、燃焼効率の改善に力点が置かれていました。

ボイラーは、ホール級で定評のあったNo.1形ボイラーをベースに、過熱管の設計変更などを行い、熱効率の向上を実現しました。先台車の設計変更による強度向上、ブラストパイプ形状変更による通風性能強化なども行われています。戦後の増備車には、ホークスワース設計の新型テンダー（炭水車）が採用されるなど、徹底的な改良が加えられました。

製造と運用：戦中から戦後へ

6959形は、GWRのスウィンドン工場で製造されました。1944年から1950年にかけて、61両（6959-6999、7900-7929）が製造されました。戦時中はキャブサイドウィンドウのない状態で製造され、戦後になってから追加されたというエピソードも残っています。

ホール級の後継機として、改ホール級は戦中・戦後のGWR、そしてイギリス国鉄の国有化後も、貨客両用機関車として活躍しました。その高い信頼性と性能は、機関士や整備担当者からも高く評価されていました。

改ホール級は、その優れた性能から1960年代まで運用されました。1963年に最初の廃車が始まり、1966年に最後の機関車が廃車されました。No.6998「バートンアグネスホール」は、最後の西部地域の蒸気機関車列車を牽引するという栄誉を担いました。

保存と遺産：今も語り継がれる名機

現在、数両の6959形が保存されており、その雄姿を見ることができます。戦時下の厳しい状況下で誕生し、高度な技術と改良によって生み出された改ホールクラスは、イギリスの鉄道史において重要な存在であり続けています。その設計思想や技術革新は、現代の鉄道技術にも影響を与えていると言えるでしょう。ホール級の伝統を受け継ぎつつ、新たな技術を取り入れることで、戦時下の厳しい状況を克服し、戦後も長く活躍した6959形は、まさに時代の変化に対応した傑作機関車と言えるのではないでしょうか。

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