グロス請け

グロス請けについて

グロス請けとは、日本のテレビアニメ制作における特有のシステムであり、外部の制作会社が1話分を丸ごと制作を受け負う形態を指します。この名称は、英語の「gross」すなわち「全体の」に由来し、通常、元請けとなる制作会社が全体のクレジットで表記されることからもその名がついています。

制作システムの概要

グロス請けのシステムにおいて、制作会社は特定の話数に関して全面的な責任を負い、完成したアニメーション作品を元請けに納品します。これに対し、下請けの制作会社は、その話数に対してのみ「制作協力」としてクレジットされることが一般的です。テレビアニメは、月に4本の30分作品を作成する必要があり、元請けの制作会社が全ての制作を行うと、これを支えるためには非常に多くのスタッフを内部に抱えなければならず、結果として大きな負担となります。

このため、日本のテレビアニメ制作では、分業システムが発展し、社内社員に加え、外部の作画や美術、撮影、音響などの専門スタジオに業務を外注することが通例となりました。元請け会社は全体の制作管理を行いますが、各部門の制作進行はスタッフ間で連絡を取り合って行われます。中には、制作管理のみを行い、実際の作業を外部に委託する元請け会社も存在します。

グロス請けの実績と役割の変化

最近では、制作能力を高めてきた外注プロダクションもあり、彼らは1話単位での制作責任を持てるようになってきました。これによって、グロス請けが広く行われるようになりました。通常、脚本は元請けが発注し、その後の演出や作画、背景美術、仕上げ、撮影といった制作工程をグロス請けの制作会社が行った後、音響制作会社が音声を付けるのが一般的です。

また、一部の会社は背景や撮影の専門部門を持たず、必要な場合はさらに他のスタジオに外注します。グロス請けを行うスタジオは準大手や小規模のところが多いですが、大手の制作会社もグロス請けを行うことがあります。曲務り的な状況としては、一時的に途中で制作チームが交代する場合や、特定のスタジオの存在が名目上でしか機能していない場合も見られ、テレビアニメ制作において柔軟な対応が求められています。

興味深いことに、演出から仕上げまでを自社内で行える体制を整えている制作会社も存在しますが、完全に自社内だけで全話数を担当できる会社は現在存在しません。とはいえ、一部のOVAやプロモーション映像については完全内製で制作する実績もあるため、それらが新たな道を開く場合にも注目です。

歴史的な背景

テレビアニメの誕生期には、分業システムが確立されておらず、全ての作業を社内で行う形態が主流でした。しかし、そうした体制では過度の労働が生じ、スタッフに深刻な影響を及ぼす事態が続出しました。実際に『鉄腕アトム』では早くも外注の必要性が認識され、スタジオ・ゼロなどに作画を発注しました。その後、多くの新しいプロダクションが生まれ、グロス請け体制が確立していくことになります。特に1990年代後半に入ると、深夜アニメが登場し、OVA的なメディアミックスが進むことで、制作の負担が軽減されました。これによって、グロス請けを主力としていた制作会社が元請けに成長する機会も増えていきます。

その他の用法

グロス請けはアニメ制作以外の映像や音楽制作業界でも用いられていますが、その意味や形態は業種によって異なります。たとえば、テレビドラマにおいては、特定の制作会社が主要な責任を持ちながら、他の映画会社や制作プロダクションに制作を委託する事例も存在します。

このように、グロス請けは日本のアニメ制作の中核を占めるシステムであり、日々進化を続けていることが伺えます。

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