グンバイヒルガオ

グンバイヒルガオ

（軍配昼顔、学名: Ipomoea pes-caprae）

グンバイヒルガオは、ヒルガオ科に属する、地面を這うように広がる性質を持つ多年生の草本植物です。主に海岸の砂浜に生育する典型的な海浜植物であり、沖縄地方では「アミフィーバナ」や「ハマカンダー」といった方言名でも親しまれています。

特徴的な葉と花の姿

この植物の大きな特徴は、その葉の形にあります。葉は先端に浅い切れ込みが入った楕円形をしており、日本の相撲の審判が持つ「軍配」に似ていることから、「軍配昼顔」という和名がつけられました。学名に含まれる『pes-caprae』はラテン語で「ヤギの足」を意味し、これも葉の形から連想されたものです。

花は、特定の開花時期が厳密ではありませんが、主に夏を中心に年間を通して見られます。直径は5〜6cmほどで、薄紫色をした漏斗形をしています。

果実はさやのような形で、内部に種子を宿しています。熟して乾燥すると自然に裂け開き、中の種子がこぼれ落ちます。この種子は海水に浮かぶ性質があり、海流に乗って遠くまで運ばれることで、その分布域を拡大させる重要な役割を果たしています。

分布とその広がり

グンバイヒルガオは、熱帯から亜熱帯にかけての世界中の海岸、特に砂浜に広く自生しています。熱帯地域の砂浜海岸では、この植物が一面に広がる群落を形成している光景がよく見られます。

日本国内では、鹿児島県から沖縄県の海岸線に加え、長崎県の各所、大分県佐伯市の元猿海岸、四国地方の南部、紀伊半島の南部といった地域に分布しています。これらの地域より北の日本では、通常、自生している姿は見られません。しかし、その種子は黒潮に乗って、時として遠く東北地方の海岸まで流れ着き、稀に発芽して注目されることもあります。

近年、三重県津市の伊勢湾沿岸の広い範囲で複数の個体が同時に発見され、中には発芽したばかりの幼い株も見つかりました。このような突発的な生育範囲の拡大には、船のバラスト水などが影響している可能性も指摘されています。ただし、冬季に寒さが厳しくなる地域では、夏の間は生育しても、秋から冬にかけての低温によって枯れてしまうのが一般的です。

重要な植物としての側面

グンバイヒルガオは、同じヒルガオ科でも、浜辺によく見られるハマヒルガオとは異なり、サツマイモ属（Ipomoea属）に分類されています。

このサツマイモ属には、サツマイモなど重要な作物が含まれる一方、農業に深刻な被害をもたらす可能性のある特定害虫（アリモドキゾウムシ、イモゾウムシ、サツマイモノメイガなど）の宿主となる性質を持つ種が存在します。そのため、植物防疫法に基づき、小笠原諸島およびトカラ列島以南の南西諸島といった特定の地域から日本本土への生きた植物体（種子、苗、株など）の持ち込みは、たとえ国内移動であっても厳しく制限されています。グンバイヒルガオもこの規制の対象となる重要な植物の一つです。

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