ケイトンズヴィル事件の九人

ケイトンズヴィル事件の九人について

ケイトンズヴィル事件の九人、一般的に「Catonsville Nine」として知られる彼らは、1968年5月17日にアメリカのメリーランド州で行動を起こしました。彼らはベトナム戦争に対する抗議の一環として、徴兵書類を焼却するという決断を下しました。この行動は、多くの人々に影響を与え、反戦運動のシンボルの一つとなりました。

事件の背景

1960年代、アメリカはベトナム戦争の激化に伴い、国内外でさまざまな抗議活動が広がっていました。特に多くの宗教者や市民が、政府の戦争政策に対して異議を唱え、徴兵制度への反対を表明していました。そんな中で、カトリック信者である9人は自らの信仰に基づき、行動を起こすことを決意しました。

行動の内容

彼らはメリーランド州の徴兵委員会の施設に赴き、378通の徴兵書類を駐車場に持ち出して、手製のナパームを使い火を点けました。この行為は、戦争に対する強いメッセージとして広く報道されました。9人は具体的に以下のメンバーで構成されていました:

• - ダニエル・ベリガン神父
• - フィリップ・ベリガン神父
• - デイビッド・ダースト修道士
• - ジョン・ホーガン修道士
• - 芸術家トム・ルイス
• - マージョリー・ブラッドフォード・メルヴィル
• - トーマス・メルヴィル（元修道士）
• - ジョージ・ミシュ
• - メアリー・モイラン（元修道女）

特にフィリップ・ベリガン神父とトム・ルイスは、過去に「バルティモアの4人」として知られる事件でも徴兵書類に血をかけたとして逮捕されていました。このとき、彼らは保釈中の身であり、その経験が今回の抗議行動に強い影響を与えたと言われています。

法廷での審理

ケイトンズヴィル事件は、1968年10月5日から9日の間に連邦裁判所で審理されました。被告側の弁護団は著名な弁護士ウィリアム・クンスラーが率いており、彼の弁護戦略が注目されました。彼らは、米国政府の所有物を故意に破壊したとして有罪判決を受け、選抜徴兵局の書類についても破壊を行ったとして同様の判決が下されました。

文化的影響

ダニエル・ベリガン神父は、裁判の詳細を描いた戯曲『ケイトンズヴィル事件の九人』を自由詩の形式で執筆しました。この作品は、サウル・レヴィットによる通常の対話形式の脚色で演じられ、多くの人々に感動を与えました。また、日本では有吉佐和子とエリザベス・ミラーの共訳により、1972年に新潮社から刊行されています。同年には、グレゴリー・ペックの主演による映画化も行われました。

ケイトンズヴィル事件は、ベトナム戦争の非道さに対する抗議として、また信仰に基づく行動が如何に強力なメッセージを持つかを示す貴重な事例となっています。彼らの勇気ある行動は、今も多くの人々に影響を及ぼし、反戦運動や市民的不服従の象徴的な出来事となっています。

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