ケイト&アンナ・マクギャリグル

ケイト＆アンナ・マクギャリグル

ケイト・マクギャリグル（1946年2月6日 - 2010年1月18日）とアンナ・マクギャリグル（1944年12月4日 - ）は、カナダのケベック州をルーツとする、アイルランド系とフランス系カナダ人の血を引く姉妹シンガーソングライターです。彼女たちは、フォーク音楽を中心に、ケベックの伝統音楽やカントリーなどの多様な要素を取り入れた独自のスタイルを確立し、カナダ国内外で高い評価を得ました。ケイトが2010年に逝去するまで、姉妹デュオとして精力的な活動を展開しました。

二人の音楽活動は1960年代に本格化しました。姉のアンナがモントリオール美術学校で美術を、妹のケイトがマギル大学で工学を学ぶ傍ら、公の場での演奏を始め、オリジナル楽曲の制作にも力を入れます。1963年から1967年にかけては、ジャック・ニッセンソン、ピーター・ウェルドンと共にフォークグループ「マウンテン・シティ・フォー」として活動しました。

マクギャリグル姉妹の書く楽曲は、他のアーティストたちにも早くから注目されていました。リンダ・ロンシュタット、エミルー・ハリス、ジュディ・コリンズといった名だたるシンガーたちが彼女たちの作品を取り上げ、カバーしました。これらのカバーバージョンが広く知られたことが、姉妹自身のレコーディングキャリアにつながる大きな契機となります。1974年に初のレコーディング契約を結び、1976年には満を持してセルフタイトルを冠したデビューアルバム『ケイト&アンナ・マクギャリグル・ファースト』をリリースしました。その後も精力的に作品を発表し続け、2008年までに合計10枚のスタジオアルバムを制作しています。

ケベック州の英語圏コミュニティで育った二人ですが、フランス語での楽曲制作や演奏も活発に行いました。アルバムの中には『Entre la jeunesse et la sagesse』や『La vache qui pleure』のように、全曲がフランス語で歌われている作品もあります。また、ウェイド・ヘムズワースの楽曲「ログ・ドライヴァーのワルツ」のカバーは、1979年にカナダ国立映画局制作のアニメーション映画のサウンドトラックとして使用され、世代を超えて親しまれる代表的な一曲となりました。

キャリアを通じて、多くの著名なミュージシャンとの共演も実現しています。2001年にはニック・ケイヴ・アンド・ザ・バッド・シーズのアルバム『永遠の誓い』でバッキング・ボーカルを務めたほか、ゲリー・コンウェイ、パット・ドナルドソン、チェイム・タネンバウムら、様々なジャンルのアーティストたちと共に演奏を行いました。ケイトが亡くなる直前まで、二人は作曲、録音、ライブ活動を精力的に続けていました。

プライベートでは、モントリオールで生まれ、サンソヴェール北部の郊外で育ちました。幼い頃から村の修道女からピアノを学び、音楽の基礎を培ったと言われています。ケイトは1971年にシンガーソングライターのラウドン・ウェインライトIIIと結婚しましたが、1976年に離婚。二人の間には、後に自身も著名なミュージシャンとなるルーファス・ウェインライトとマーサ・ウェインライトという子供たちがいます。一方、アンナはカナダのジャーナリスト・作家であるデーン・ランケンと結婚し、リリーとシルヴァンという二人の子供をもうけました。デーンは姉妹の音楽活動にも深く関わり、アルバムでボーカル参加したり、二人の伝記を執筆したりしています。また、姉妹にはもう一人、ジェーンという姉妹がおり、彼女は映画やテレビの作曲家として活動する傍ら、ケイトとアンナのビジネス・マネージャーを務め、デュオのために楽曲を提供したり演奏に参加したりと、姉妹の活動を多方面から支えました。妹のケイトは、希少ながんである肉腫のため、2010年1月18日に63歳でこの世を去りました。

長年にわたる音楽界への貢献に対し、マクギャリグル姉妹は数々の栄誉に輝いています。1993年にはカナダ勲章を受章し、2004年にはカナダ総督実演芸術賞を受賞しました。2006年にはSOCAN表彰で生涯功労賞が贈られ、ケイトが逝去した年の2010年にはモジョ・ルーツ・アワードを受賞。この賞は、アンナとケイトの子供たちであるルーファスとマーサによって代理受領されました。

ケイトの死によって姉妹デュオとしての活動は幕を閉じましたが、彼女たちが生み出した楽曲は、今なお多くの人々に愛され、歌い継がれています。特に、子供であるルーファスとマーサも音楽活動を通じて、母親たちの音楽的遺産を次の世代へと繋いでいます。ケイト＆アンナ・マクギャリグルは、カナダの音楽史において、その独特なサウンドと温かみのある歌声、そして普遍的な魅力を持つ楽曲で、不朽の存在として記憶されています。

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