ケジラミ

ケジラミ (毛虱) Pthirus pubis

ケジラミは、ヒトに寄生するシラミの一種で、その体長は1.5から2mm程度です。この寄生虫は特に陰部に生息し、形状は左右に幅広く、カニに似た特徴を持っています。英語では「Crab louse」または「Pubic louse」と呼ばれています。

概要

シラミ類は動物の種類や寄生する部位によって種が異なることが一般的です。ヒトに寄生するシラミには三つの主要な種類があります。アタマジラミとコロモジラミはそれぞれ頭髪と衣類の中で生息しますが、ケジラミは陰毛の周辺に特化しています。そのため、外見的な特徴や生息場所が明らかに異なります。体型は胸部が幅広く、歩脚が左右に広がっているため、特に目立つ形状となっています。

形態

ケジラミの体は淡褐色で半透明であり、他のシラミに比べて一回り小さいのが特徴です。特に胸部が融合しており、前半部に対して後半部は細くなっています。歩脚は中脚と後脚が大きく発達しており、強力に陰毛を掴むための鎌状の構造をしています。卵は長楕円形で、陰毛に透明な物質でしっかりと付着され、産卵は主に陰毛の付け根近くで行われます。

生息環境

ケジラミは陰部を専らの生息地とし、性行為を通じて他者に感染を広げることがありますが、温泉やプール、寝具を介した感染も報告されています。ケジラミは吸血性であり、噛まれると強烈な痒みを伴いますが、現時点では病原体を運ぶことが知られていないため、健康への影響は軽微とされています。

生活史

ケジラミの卵は約7日間で孵化し、幼虫から成虫になるまでの期間はおおよそ20日程度です。雌成虫は1日に数個の卵を産卵し、生涯で40個ほどの卵を残すことが知られています。ケジラミの成虫は特に絶食に耐える能力が低く、人から離れると早急に餓死する傾向があります。

感染の広がり

ケジラミは世界中で発見されており、成人の男女間で感染が確認されています。家庭内での感染もあります。特に日本においては、1971年からの報告によると、ケジラミの発生が増加していることが示されています。オーストラリアでは性感染症の1-2%を占め、東京女子医科大学の報告では初診患者50000人中、ケジラミ症が7件確認されています。

駆除方法

ケジラミの駆除にはフェノトリンを含んだ粉剤やシャンプー剤を使用することが有効です。また、感染がどのように広がっているのかを調査することも重要だとされています。

逸話

著名な作家、北杜夫は自身の著作「どくとるマンボウ昆虫記」でケジラミに触れており、その姿形や感染の経緯について興味深い見解を示しています。このように、ケジラミは古くから人間の生活に密接に関わってきた寄生虫であると言えます。

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