ケナは韓国が嫌いで

『ケナは韓国が嫌いで』（한국이 싫어서）

この作品は、2023年に製作された韓国映画であり、2015年に発表されたチャン・ガンミョンの同名小説を原作としています。メガホンを取ったのは、繊細な人物描写に定評があり、「第二のホン・サンス」や「韓国の是枝裕和」といった異名でも知られるチャン・ゴンジェ。彼は本作で監督だけでなく脚本も兼任しています。物語は、韓国社会における息苦しさから故郷を離れることを決意した一人の韓国人女性が、新たな地ニュージーランドで自身の生き方を探求する姿を描き出す人間ドラマです。

物語の背景

主人公は28歳の女性、ケナ。大学を卒業後、韓国の大手金融会社に勤務し、大学時代から7年間交際している恋人もいます。しかし、彼女は漠然とした韓国社会での「生きづらさ」を感じており、現在の生活から逃れるように、全てを捨てて単身ニュージーランドへの移住を選びます。新しい環境での生活は、言葉の壁や文化の違い、仕事探しなど、決して容易ではありません。それでもケナは、これまでの価値観にとらわれず、自分自身の内面と向き合いながら、本当の幸せや生きがいを見つけようと模索を続けます。

登場人物

ケナ（コ・アソン）: 物語の中心人物。安定した職や長年の恋人がいながらも、韓国社会の抑圧や息苦しさに耐えきれず、人生のリセットを求めてニュージーランドへと渡る。異国の地で様々な人々と出会い、葛藤しながら自己を再発見していく。
ジェイン（チュ・ジョンヒョク）: ニュージーランドでケナが出会う韓国人留学生。異国の地で孤立しがちなケナにとって、心を開ける友人となる存在。
ジミョン（キム・ウギョム）: 韓国に残したケナの恋人。優しく誠実な人物で、ケナとの関係に真摯に向き合っているが、遠距離恋愛とケナの変化に直面する。
ミナ（キム・ジミン）: ケナの妹。ソウル郊外の古い団地で両親と暮らしており、ケナの移住後も家族の現実的な問題に関わる。
ヒョンソ（a.mond）: ニュージーランドでケナがアルバイト先で出会う年下の男性。ケナにとって新たな関係性の可能性を示唆する存在。
ケナの父親（イ・サンヒ）: 建て替えを控えた古い団地に住み、家族の新しい住まいを探す必要に迫られている。
ケナの母親（オ・ミンエ）: 同様に団地問題に直面しており、新居購入資金の一部としてケナに経済的な援助を求めるが、彼女に断られてしまう。
パク・キョンユン（パク・スンヒョン）: ケナの大学時代の友人。公務員を目指し、長期にわたる就職浪人を続けている。
キム・テウン（キム・ジヨン）＆チャ・サンウ（パク・ソンイル）: ニュージーランドで韓国人留学生をサポートする仲介業者夫妻。ケナの現地生活の基盤作りに関わる。
エリー（Trae TE WIKI）: ニュージーランドでのケナの職場の同僚。ケナが職場でトラブルになった際に庇ってくれたことをきっかけに親交を深める。
リッキー（Morgan Oey）: ニュージーランドでケナが出会うインドネシア出身の男性。
ハジュン（Euan PARK）: 仲介業者キム・テウンの息子。韓国語が苦手で、ケナが彼の家庭教師を務めることになる。
* チェ・ボクヒ（チョン・イラン）: 特別出演。「幸福の伝道師」として知られ、「お金ではなく幸せを追求しよう」という彼女の言葉は、ケナの価値観に影響を与える。

スタッフ

監督・脚本はチャン・ゴンジェ。原作はチャン・ガンミョン。製作はユン・ヒヨンが担当し、音楽をクォン・ヒョンジョン、撮影をナ・ヒソク、編集をイ・ヨンジョンが務めています。その他、美術のキム・ソナ、衣装・メイクアップのユ・ジンダン、照明のチョン・セヨンらが制作チームに名を連ねています。

公開情報

本作は、2023年10月4日に開催された第28回釜山国際映画祭のオープニング作品として世界で初めてお披露目されました。その後、製作国である韓国では2024年8月28日に公開。日本では、2025年3月7日に劇場公開される予定です。

『ケナは韓国が嫌いで』は、現代社会を生きる若者が抱える閉塞感や、自分らしい生き方を見つけるための挑戦をリアルに描き出した作品として、多くの観客に共感を呼んでいます。

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