ケプラー25

ケプラー25星系

ケプラー25は、天の川銀河において、こと座の領域に位置する恒星です。地球からは約799光年という、非常に遠い距離に存在しています。この恒星は、私たちの太陽と比較していくつかの特徴的な違いを持っています。質量や直径は太陽よりわずかに大きいと見積もられていますが、その明るさ、すなわち光度は太陽の約2.4倍に達し、より強力なエネルギーを放出しています。

地球から見たケプラー25の明るさを示す見かけの等級は10.6等級です。これは、夜空で肉眼で見える最も暗い星よりもずっと暗いため、一般的な双眼鏡や小型の望遠鏡を使ってもその姿を捉えることは難しく、観測にはある程度の口径を持つ天体望遠鏡が不可欠です。

この恒星が天文学者の注目を集めたのは、その周囲に複数の太陽系外惑星が発見されたためです。惑星の探査は、主に太陽系外惑星のトランジット（惑星が恒星の手前を通過する現象）を検出するために設計されたNASAのケプラー宇宙望遠鏡によって行われました。

2011年、ケプラー望遠鏡が取得した精密な測光データ（星の明るさの変化の測定）の解析から、ケプラー25の明るさが周期的に、かつごくわずかに低下する現象が二つの異なる周期で検出されました。これは、二つの天体が恒星の手前を繰り返し通過していることを示しており、これらの天体は当初、惑星候補として特定されました。このトランジット法は、恒星の前面を通過する惑星によって隠される光の量を測定することで惑星の存在を示唆する、太陽系外惑星探査における主要な手法の一つです。

これらの候補天体が実際に惑星であるかを確認し、その物理的な性質を探るため、さらなる詳細な分析が行われました。特に重要だったのが、トランジットが発生する正確な時間を計測する手法、トランジット時刻変動（TTV）の分析です。もし一つの恒星の周りに複数の惑星が存在する場合、それらの惑星同士の重力的な相互作用によって、各惑星が恒星の前を通過するタイミングがわずかに早まったり遅れたりします。この時間のずれ（TTV）を検出できれば、候補天体が確かに惑星であること、さらにはその質量についての情報を得ることができます。ケプラー25の二つの惑星候補についてもTTVが観測され、これらが互いに重力的に影響を与え合う惑星であることが確認されました。

さらに、この星系にはまだ発見されていない惑星が存在する可能性が考えられました。そこで、2014年1月には、地上にある高性能な望遠鏡を用いた追跡観測（フォローアップ観測）が実施されました。この観測では、視線速度法という別の手法が用いられました。視線速度法は、惑星の重力によって恒星がわずかに揺れ動くことによるスペクトル線のドップラー効果（波長の変化）を測定することで惑星の存在を検出する方法です。この視線速度測定の結果、先に発見された二つの惑星とは異なる軌道を持つ、三つ目の惑星の存在が明らかになりました。

ケプラー25星系における複数の惑星発見は、多様な太陽系外惑星が存在する可能性を示す重要な事例です。特に、ケプラー宇宙望遠鏡によるトランジット観測だけでなく、TTV分析や視線速度法といった複数の手法を組み合わせて惑星系を詳細に調査するアプローチの有効性を示すものとなりました。ケプラー宇宙望遠鏡は、その運用期間中に数千もの太陽系外惑星候補を発見し、私たちの宇宙における惑星系の分布や多様性に関する理解を飛躍的に深める上で、極めて貢献度の高いミッションとなりました。

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