ケリントス

ケリントスは、1世紀から2世紀にかけて活動した、小アジア出身のユダヤ人キリスト教徒です。彼は、キリスト教と混合主義的なユダヤ教の要素を組み合わせたグノーシス主義的な思想を抱き、自らの信奉者たちによって「ケリントス派」と呼ばれる一派を形成しました。

ケリントスの教えは、正統的なキリスト教の教義とは大きく異なっていました。彼は、ナザレのイエスを「公正で賢明な人物」と評価する一方で、あくまで「人間」に過ぎないと主張しました。さらに、イエスの死は「無意味」であり、彼を「救世主」とは認めませんでした。ケリントスは、イエスは神によって選ばれた「養子」であるという独自の解釈も示しました。このため、ケリントス派は、しばしばキリスト養子論と関連付けられて語られることがあります。

初期の教会教父であるエイレナイオスによれば、使徒ヨハネは、ケリントスの主張に対抗するために「ヨハネによる福音書」を著したと伝えられています。これは、ケリントスの思想が、当時のキリスト教社会において無視できない影響力を持っていたことを示唆しています。

また、ケリントスは、世界の創造についても独自の考えを持っていました。彼は、世界は唯一神によって創造されたのではなく、「デミウルゴス」と呼ばれる下位の創造神、あるいは天使たちによって形成されたと主張しました。この考えは、グノーシス主義の特徴的な要素であり、物質世界を不完全なものと見なす思想と関連しています。

ケリントスの教えは、初期キリスト教における異端の一つとして扱われましたが、その思想は、後のグノーシス主義運動に影響を与えたと考えられています。彼の思想を詳細に記録した文書は現存しませんが、当時の教会教父たちの著作を通じて、その教えの一部を知ることができます。

外部リンク

カトリック百科事典
Eusebius, Historia Ecclesiae

もう一度検索