ケレル

ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーの遺作にして問題作『ケレル』

1982年、鬼才ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーの遺作として公開された『ケレル』（原題：Querelle）は、多くの映画ファンの記憶に刻まれた問題作です。フランスと西ドイツの合作映画である本作は、ジャン・ジュネの小説『ブレストの乱暴者』を原作としており、港町を舞台に、水兵ケレルの破滅的な運命を描いています。

ファスビンダー監督独特の映像美と、人間の深層心理をえぐるストーリー展開は、観る者の心を揺さぶるでしょう。美しくも残酷な描写、そして登場人物たちの複雑な人間関係は、現代社会における人間の業を映し出しているかのようです。

破滅への道を辿る水兵ケレル

主人公ケレルを演じるのは、ブラッド・デイヴィス。彼は美貌を持ちながら、同時に傲慢で自己中心的、そして残酷な一面も持ち合わせた魅力的な人物です。ケレルは、港町で出会う様々な人々と関わり合い、欲望の赴くままに奔放に生きていきますが、その行為は次第に彼自身を破滅へと導いていくことになります。

ケレルを取り巻く人物たちも、それぞれに複雑な人間模様を織りなしています。ジャンヌ・モロー演じる港の淫売宿の女主人リジアヌ、フランコ・ネロ演じるケレルの上官セブロン大尉、そして町を牛耳る闇の支配者ノノなど、個性的なキャラクターたちが、ケレルの運命を複雑に絡み合わせていきます。

豪華キャストとファスビンダーの演出

本作には、ジャンヌ・モローやフランコ・ネロといった、当時のヨーロッパ映画界を代表する名優たちが顔を揃えています。彼らの圧倒的な存在感と演技力は、作品の深みと重厚感をさらに増していると言えるでしょう。

ファスビンダー監督は、独特の演出手法で知られていますが、『ケレル』においても、その才能は遺憾なく発揮されています。スタイリッシュな映像、そして象徴的なシーンの数々は、観る者に強い印象を与え、物語に深みを与えています。また、原作小説の世界観を見事に映像化している点も高く評価されています。

日本での評価と反響

日本では『ファスビンダーのケレル』という題名でも知られており、公開時には「誰もが自分の愛するものをだめにする。」というキャッチコピーが付けられました。このコピーは、作品のテーマを端的に表していると言えるでしょう。

Rotten Tomatoesの批評家レビューでは、14件中8件が高評価（57%）で、平均点は6.1点と、比較的高い評価を得ています。これは、ファスビンダー監督の演出力と、豪華キャスト陣の演技力の高さが評価された結果と言えるでしょう。しかし、その一方で、物語の難解さや、描写の過激さから、賛否両論が巻き起こった作品でもあります。

まとめ

『ケレル』は、美しい映像と重厚なストーリー、そして豪華キャスト陣の演技によって、観る者を魅了する、間違いなく傑作と言えるでしょう。しかし、同時に、人間の深層心理をえぐる過激な描写や、複雑な物語展開ゆえに、万人におすすめできる作品ではありません。ファスビンダー監督の集大成ともいえる本作は、映画史に名を刻む不朽の名作であり、同時に、現代社会を映す鏡として、今もなお多くの観客を惹きつけています。興味のある方は、ぜひ一度、この作品と向き合ってみてください。

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