ゲオルギー・グレチコ

ゲオルギー・グレチコ：ソビエト宇宙開発のパイオニア

ゲオルギー・ミハイロヴィチ・グレチコ（ロシア語: Гео́ргий Миха́йлович Гре́чко、1931年5月25日 - 2017年4月8日）は、20世紀後半のソビエト連邦において、宇宙開発の最前線で活躍した傑出した宇宙飛行士です。現在のサンクトペテルブルクにあたるレニングラードで生を受けた彼は、冷戦下の宇宙開発競争時代に、数々の重要なミッションを遂行しました。

輝かしいキャリアの始まり

グレチコ氏は、高度な学識と技術的背景を持っていました。彼はバルト工業大学を卒業後、さらに学びを深めて数学の博士号を取得。その卓越した知性は、後の宇宙飛行士としての活動においても大いに生かされることになります。

キャリアの初期には、ソビエト宇宙開発の父とも称される偉大な技術者、セルゲイ・コロリョフが率いるデザイン事務所で技術者として働き始めました。この経験は、彼に宇宙船や宇宙システムの深い理解をもたらしました。

当初、グレチコ氏はソビエト連邦が計画していた有人月探査計画の一環として、宇宙飛行士候補に選ばれました。しかし、アメリカのアポロ計画に先を越される形でソビエトの月計画が縮小・中止されると、彼の活動の場は、地球軌道上を周回する宇宙ステーション「サリュート」での長期滞在ミッションへと移ることになります。

3度にわたる宇宙飛行とサリュートでの功績

グレチコ氏は生涯で合計3度の宇宙飛行を経験しました。これらはすべて、サリュート宇宙ステーションへの長期滞在を目的とした重要なミッションでした。

1. ソユーズ17号 (1975年1月11日-2月9日)：これが彼の初の宇宙飛行でした。サリュート4号宇宙ステーションへの往復ミッションに搭乗し、約30日間の滞在期間中に科学実験や観測を行いました。
2. ソユーズ26号 (1977年12月10日-1978年3月16日)：彼のキャリアにおいて最も特筆すべきミッションの一つです。同僚のユーリ・ロマネンコと共にソユーズ26号で打ち上げられ、当時軌道上にあった第2世代の宇宙ステーション、サリュート6号にドッキングしました。この長期ミッション中に、グレチコ氏は宇宙開発史における重要なマイルストーンを複数達成しました。
宇宙遊泳 (船外活動、EVA)：サリュート6号滞在中の1977年12月20日、グレチコ氏は「オーラン」宇宙服を着用して船外活動を実施しました。これは、サリュート6号への長期滞在クルーとしては初めての船外活動であり、ステーションの点検や修理、機器の設置など、宇宙空間での作業能力を示す重要な機会となりました。
宇宙滞在時間世界記録更新：サリュート6号での任務は長期に及びました。1978年2月2日には、彼の宇宙滞在時間の累計が84日を超え、当時の世界記録を更新するという偉業を達成しました。これは、人類が宇宙空間に長期間滞在する能力を高める上で、極めて重要な一歩となりました。
3. ソユーズT-14 (1985年9月17日-9月26日)：これが彼の3度目の宇宙飛行でした。サリュート7号宇宙ステーションへのミッションに参加し、比較的短期間ではありましたが、経験豊富な宇宙飛行士として貢献しました。

宇宙開発からの引退、そしてその名を冠するもの

長年にわたりソビエトおよびロシアの宇宙プログラムに貢献したグレチコ氏は、1992年、ロシア科学アカデミーで行われた大気物理学に関する講義をもって、宇宙飛行士としての、そして宇宙開発への直接的な関与から正式に退きました。

彼の宇宙開発への多大な貢献を記念し、1979年にソビエト連邦の天文学者ニコライ・チェルヌイフによって発見された小惑星には、敬意を表して「グレチコ」（小惑星番号3147）という名が冠されています。これは、彼の功績が天文学の分野においても認識され、永遠に記憶されるべきものであることを示しています。

ゲオルギー・グレチコは、その技術的知識、パイオニア精神、そして特にサリュート宇宙ステーションでの長期滞在や船外活動といった功績を通じて、人類の宇宙進出において確固たる足跡を残しました。彼の業績は、今日の国際宇宙ステーション（ISS）における長期滞在や船外活動の基盤ともなっており、宇宙開発史において語り継がれるべき人物です。

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