コイルガン

コイルガン：電磁力で弾丸を発射する仕組み

コイルガンは、電磁石のコイルを使って金属製の弾丸を加速し、発射する装置です。レールガンと同様に電磁力を利用した兵器ですが、その構造と動作原理は大きく異なります。レールガンが並行した2本の導体間に弾丸を挟み込み、そこに大電流を流して発射するのに対し、コイルガンはコイル状の電磁石で弾丸を引き込み、段階的に加速させる仕組みです。

レールガンとの比較

レールガンは強力な電流が必要となる一方、コイルガンは比較的少ない電力で動作できます。これは、レールガンが弾丸自体に電流を流す必要があるのに対し、コイルガンはコイルに電流を流すだけで済むためです。また、コイルガンは動作音が小さく、火薬を使用しないため、環境への影響も少ないと言えるでしょう。ただし、レールガンは理論上、光速に近い初速度を実現できるのに対し、コイルガンはコイルの抵抗などにより、同等の初速度を得ることが困難です。

コイルガンの原理と構造

コイルガンは、主に「吸引型」と呼ばれる方式が広く知られています。この方式では、複数のコイルを直列に配置し、弾丸が各コイルを通過する際に発生する磁力によって段階的に加速します。弾丸は磁性体である必要があり、各コイルは弾丸の位置に合わせて適切なタイミングで通電・遮断される必要があります。通電・遮断の制御には、コンデンサによる瞬間的な放電や、フォトインタラプタによる光学的な検知などが用いられます。

より複雑なシステムでは、マイコンなどを用いた電子制御によって、コイルの通電を精密に制御することで、より効率的な加速を実現できます。また、コイルの形状や配置、弾丸の材質など、様々な要素がコイルガンの性能に影響を与えます。

歴史と現状

コイルガンのアイデアは、1900年にクリスチャン・ビルケランドが特許を取得したことにまで遡ります。しかし、当時は技術的な制約から実用化には至らず、軍事用途での開発も停滞しました。アメリカ合衆国では、戦略防衛構想の一環として研究が進められた時期もありましたが、レールガン開発の進捗に遅れを取り、研究は中止されたようです。

近年では、科学愛好家による自作コイルガンがインターネット上で公開されるなど、技術的な発展がみられます。しかし、これらの自作コイルガンは、威力が比較的弱く、スリングショットと同等かそれ以下であることが多いようです。

一方、Arcflash Labs社のような企業もコイルガン開発に携わっており、市販モデルも存在します。しかし、強力なコイルガンは、その潜在的な危険性から、多くの国で厳しく規制されています。

日本の銃刀法

日本では、2024年6月14日に改正銃刀法が公布され、コイルガンが銃器類に加えられました。既存のコイルガン所有者は、所持許可申請、廃棄、譲渡のいずれかの措置をとる必要があります。措置を怠ると、不法所持として処罰されます。

架空の装置としてのコイルガン

SF作品などでは、「電磁投射砲」や「ガウスガン（ガウス砲、ガウスキャノン）」といった名称で、コイルガンに似た架空の兵器が登場します。「ガウス」という名称は、ガウス単位系に由来するもので、数学者のカール・フリードリヒ・ガウスとは直接的な関係はありません。これらの名称は、コイルガンに限らず、電磁投射方式の装置全般を指す場合があります。

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