コインロッカーの女

コインロッカーの女：運命に翻弄される少女と冷酷な母を描いたクライムサスペンス

『コインロッカーの女』（原題：차이나타운）は、2015年に公開された韓国映画です。本作は、ハン・ジュニ監督の長編映画デビュー作として注目を集め、第68回カンヌ国際映画祭国際批評家週間にも出品されるなど、高い評価を得ました。東京フィルメックスや『未体験ゾーンの映画たち』でも上映され、日本でも多くの観客を魅了しました。

物語の中心となるのは、地下鉄のコインロッカーに捨てられていた赤ん坊、イリョンです。警察によって保護された彼女は、「10番のロッカー」から「イリョン」と名付けられ、仁川のチャイナタウンでヤミ金業者を営む冷酷な女、”母”に引き取られます。

”母”は、イリョンをはじめとする身寄りのない子供たちを育て上げ、組織的な犯罪行為を行いながらチャイナタウンを支配していました。イリョンは”母”の右腕として、放火や殺人を含む様々な犯罪行為に手を染め、非情な世界で生きていきます。

そんなある日、イリョンは債務者である男の家の取り立てに向かいます。しかし、男は海外に逃亡しており、家には息子であるソッキョンだけがいました。純粋で気品のあるソッキョンの姿に、イリョンは次第に心を惹かれていきます。

しかし、”母”は男から金を回収できないと判断すると、イリョンに衝撃的な命令を下します。それは、ソッキョンを殺害し、臓器を売るという非道な行為でした。

イリョンは、これまで”母”の下で生き延びるために、冷酷な行為を繰り返してきました。しかし、ソッキョンとの出会いをきっかけに、彼女の心の中に揺らぎが生じ始めます。

本作では、キム・ヘスが冷酷な”母”を、キム・ゴウンが複雑な心の動きを見せるイリョンを演じ、圧倒的な存在感で観客を魅了します。パク・ボゴム演じるソッキョンとの出会いが、イリョンの運命をどのように変えるのか、そして、”母”とイリョンの関係にどのような影響を与えるのか、目が離せない展開が続きます。

さらに、オム・テグ、コ・ギョンピョら実力派俳優たちが脇を固め、物語に深みを与えています。

『コインロッカーの女』は、韓国社会の闇の部分を描きながらも、運命に翻弄されながらも懸命に生きる女性たちの姿、そして、母と娘の関係性の複雑さを繊細に表現した作品です。衝撃的な展開と、登場人物たちの深い心理描写に、観終わった後も考えさせられる、忘れられない映画体験を与えてくれるでしょう。

主なキャスト

”母”（マ・ウヒ）：キム・ヘス
イリョン（馬逸嶺）：キム・ゴウン
パク・ソッキョン：パク・ボゴム

受賞歴

本作は、数々の映画賞を受賞しており、その高い評価が証明されています。

第52回百想芸術大賞：映画部門 新人監督賞（ハン・ジュニ）
第21回春史大賞映画祭：主演女優賞（キム・ヘス）
第19回富川国際ファンタスティック映画祭：富川チョイス長編部門 審査委員特別賞、主演女優特別言及（キム・ゴウン）
第35回韓国映画評論家協会賞：韓国映画評論家協会選定10大映画賞、主演女優賞（キム・ヘス）
第35回黄金映画賞：新人監督賞（ハン・ジュニ）、女性最優秀演技賞（キム・ヘス）
第2回韓国映画制作者協会賞：主演女優賞（キム・ヘス）
第45回ジッフォーニ映画祭：Generator+18セクション 最優秀作品賞、特別賞

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