コシダ

コシダ (小羊歯, Dicranopteris linearis)

コシダは、乾燥した山地に生える大型のシダ植物で、主にその独特な葉の形状から特定されます。ウラジロ（ウラジロ科）の近縁種でありながらも、羽片が二叉分枝している点が明確な違いです。このため、コシダは別の属として分類されています。

概要

コシダは、硬く持ちこたえる葉を特徴とし、葉の主軸から左右に羽片を広げる習性があります。毎年中心の主軸から新たな羽片を出しながら成長を続け、その様子はウラジロに似ています。しかし、コシダの羽片は下にたれず、より水平から斜め上方向に伸びます。これによって、全体的に小型のシダとして知られており、その名も「小羊歯」を指しています。

特徴

コシダの根茎は長く、横に這いながら葉を適間隔で展開します。根茎自体は太く、光沢ある金褐色の毛で覆われています。葉は全体として2メートルを超えることもあり、葉柄の長さは20-100センチメートルに及びます。側羽片は何回かにわたり対生し、その先端部分には小羽片がついています。小羽片は15-40センチメートルほどの大きさで、幅は3-8センチメートルあります。表面は黄緑色でつやがあり、裏側は粉っぽく、まばらに赤褐色の毛で覆われています。葉全体は薄くて硬く、裂片の縁は滑らかで丸みを帯びています。胞子嚢群は中心の肋と葉の縁の間に一列に並びます。

葉の形成

コシダの羽片の二叉分枝は特異な成長パターンを形成します。最初に側羽片の先端に一対の小羽片を生じさせ、その間に新たな柄が生じ、更にその先に羽片が続く構造が繰り返されます。この過程はウラジロとは異なり、コシダでは中心の中軸枝が止まることで新しい枝を生成し、それを繰り返すことで鮮やかな羽状複葉の形が成立するのです。

生育環境・生態

コシダは主に山間部で見られ、日照の多い場所から木陰の湿った場所にかけて生育します。ただし、好む土壌は貧栄養で乾燥した斜面です。山火事などの影響で裸地になると、大きな群落を作り出すことも多いです。また、ウラジロと共に、森林伐採や自然災害によって形成された裸地に多く見られ、他の植生の侵入を防いで、特有の群落を維持します。

分布

日本国内では本州の福島県以南や琉球で見ることができ、国外では朝鮮南部、中国南部、台湾、さらには東南アジアからインドに分布しています。幅広い地域に生息していますが、確実に適応を示す特性を持っています。

利用と価値

林業においては、下草として成長し、時には厄介な存在とみなされることもあります。装飾用途は少ないものの、葉柄は籠編みなどに利用されることがあります。また、日本ではほとんど栽培されることはなく、栽培が難しいため、特に成長した株の移植は困難です。

インドネシアでは民間薬として腸内寄生虫に対処するために使われ、ニューギニアでは皮膚傷や潰瘍の治療に、またマレーシアでは風邪の治療に用いられることがあります。研究によれば、コシダは抗菌活性を有し、医療分野でも一定の注目を集めています。

分類

コシダとウラジロは似ていますが、特徴的な葉の形状や生態的特性で区別されます。同属内では世界に約10種存在し、その中でも日本に自生するのはコシダだけです。シダ植物の分類学的視点から見ても、コシダは個性的な存在として位置づけられています。

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