コスタリカの鉄道

コスタリカの鉄道：歴史と現状

コスタリカの鉄道は、19世紀後半から20世紀前半にかけて、国家的プロジェクトとして整備が進められました。当初は、太平洋岸の港町プンタレナスから、首都サンホセ、そしてカリブ海沿岸のプエルト・リモンを結ぶ鉄道網の建設が主要な目標でした。しかし、資金難や険しい地形、政治的な問題など、数々の困難が建設を阻みました。

最初の鉄道は、プンタレナスに敷設された短い馬車鉄道でした。その後、幾度かの計画が頓挫する中で、1871年、アラフエラからプエルト・リモンに至る鉄道建設が本格的に開始されました。この建設は、太平洋岸からアラフエラまでの資材輸送に伝統的な牛車「カレータ」を利用するなど、工夫を凝らしながら進められました。しかし、特にスーシオ川周辺の難工事により、全線開通は1890年までずれ込みました。

太平洋岸への鉄道建設もまた、困難を伴いました。1897年に契約が締結されてから10年以上が経過し、1910年になってようやくサンホセとプンタレナスを結ぶ路線が開通しました。この時、最初の機関車「マリア・セシリア」がプンタレナスからサンホセに向けて出発しました。

太平洋横断鉄道の建設は、コスタリカ国内の主要地域を結び、ニカラグアやパナマの鉄道網との接続を目指していました。大西洋側の路線は、マティーナの港からレベンタソーン川を渡り、北部山脈を横断する複雑なルートを取っていました。サンホセで合流した路線は、アラフエラを経由して太平洋岸の港へと繋がっていました。この鉄道網は、国家と民間の鉄道会社が共同で所有・運営していました。1904年までには、大西洋沿岸のバナナ農園への支線がいくつも建設されました。

1926年には路線の電化が決定され、1930年にはサンホセからプンタレナスまでの区間で電車の運行が開始されました。しかし、1991年の地震による被害を受け、1995年には鉄道網全体の運行が停止されてしまいました。

その後、コスタリカ鉄道公団（Incofer）による再建の取り組みが行われ、2006年時点では、サンホセ近郊にいくつかの区間で鉄道が運行されています。具体的には、首都サンホセからサンペドロまでの通勤列車、サンホセとパバスを結ぶ通勤列車、そしてサンホセとカルデラを結ぶ貨物列車、さらにサンホセとカルデラ間の観光列車「ティコ・トレイン・ツアー」が運行されています。ただし、これらの路線は、ニカラグアやパナマの鉄道網とは接続していません。

なお、グアナカステ州には、スイスからの移民が建設した私設の狭い軌間の鉄道が存在します。これは現在、観光客向けの施設として活用されています。

コスタリカの鉄道の歴史は、国家建設と経済発展に大きく貢献した一方で、自然環境や経済状況、政治状況といった様々な要因に影響を受け、その発展には紆余曲折がありました。現在、部分的に運行が再開されていますが、かつての広大なネットワークの復活は、依然として課題として残されています。今後の発展に期待が寄せられます。

もう一度検索