コストセンター

コストセンターとは、経営学において、企業内の部門のうち、コストの発生状況は集計されるものの、利益の発生状況は集計されない部門のことを指します。これは、コストセンターの業績評価が、いかにコストを削減したかという点に焦点が当てられることを意味します。したがって、コストセンターの管理目標は、基本的にコストの最小化に置かれることになります。

例えば、製造工場がコストセンターとして運営される場合、その工場の主な目標は、製品の製造にかかるコストを可能な限り削減することになります。この目標を達成するために、生産ラインの効率化や単純化が進められることがあります。しかし、その結果として、生産ラインが特定の単純な製品の製造に最適化され、複雑な生産体制を必要とする製品の製造が困難になるという問題が生じる可能性があります。

このような状況下では、複雑な製品に対する需要が発生した場合、コストセンターとして運営されている工場は、それに対応することが難しくなります。結果として、より高い利益が見込める複雑な製品の製造機会を逃してしまう可能性があります。コスト削減を追求するあまり、柔軟な生産体制を構築することができず、結果的に企業の利益を損なうという本末転倒な事態も想定されます。

コストセンターの対義語として「プロフィットセンター」があります。プロフィットセンターは、コストだけでなく利益も集計される部門であり、利益の最大化を目標として運営されます。プロフィットセンターは、売上を伸ばすこととコストを削減することの両方を通して利益の向上を目指します。一般的には、営業部門やマーケティング部門などがプロフィットセンターとして運営されることが多いです。

コストセンターとプロフィットセンターは、企業内の各部門が果たす役割の違いを表しています。どちらの部門も企業全体の目標達成のために不可欠な役割を果たしていますが、その重点を置くべき目標が異なるという点で対照的です。企業は、自社の戦略やビジネスモデルに応じて、各部門をコストセンターまたはプロフィットセンターのいずれかに分類し、適切な管理を行う必要があります。

コストセンターの運用においては、単にコストを削減することのみに焦点を当てるのではなく、長期的な視点で企業全体の利益を最大化するための戦略的な視点が必要となります。例えば、製造ラインの効率化だけでなく、技術革新や従業員のスキルアップにも投資することで、より高品質な製品をより効率的に生産できる体制を構築することも重要です。

参考文献としては、神戸大学経済経営学会編著『ハンドブック経営学[改訂版]』、ミネルヴァ書房（2016年）があり、経営学におけるコストセンターの概念を深く理解する上で役立ちます。また、インターネット上の辞書サイト（コトバンクやMBA用語 Weblio辞書）も、コストセンターに関する基本的な情報を得るために有効です。

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