コスモス1267号

コスモス1267号

概要

コスモス1267号（ロシア語: Космос-1267）は、1981年にソビエト連邦が運用した無人の宇宙船です。TKSと呼ばれる大型補給船の2番目のミッションとして位置づけられており、軌道上の宇宙ステーション「サリュート6号」とのドッキングと補給任務を行いました。

機体設計

コスモス1267号に使用された機体は、TKS（トランスポート・シップ・サプライ）と呼ばれる宇宙船です。この宇宙船は総重量が約18トンに及ぶ巨大なもので、当初は秘密裡に進められていた軍事宇宙ステーション計画「アルマース」のために、ステーションへの人員輸送や補給、モジュールとしての役割を担う目的で開発されました。設計上は乗員を輸送することも可能でしたが、実際にTKSが有人で打ち上げられることは一度もありませんでした。

TKSは主に二つの部分から構成されていました。

VAカプセル（再突入カプセル）: 地球への帰還に使用される部分です。乗員が搭乗できる設計になっており、その先端には軌道離脱や姿勢制御に使用される推進システムを含むモジュールが結合していました。
FGBモジュール（機能・貨物ブロック）: 大きな内容積を持つ部分で、物資や機器を搭載するためのスペースが確保されていました。このFGBモジュール自体も独立して軌道変更を行う能力を備えており、TKS全体の推進力を提供しました。

飛行ミッション

背景と目的

コスモス1267号の運用が近づいた頃には、本来の目的であったアルマース計画は既に中止されていました。このため、完成したTKS機体は、当時軌道上にあったソ連の主要な宇宙ステーション「サリュート6号」とのドッキングミッションに転用されることになりました。これはTKS宇宙船にとって、初めての宇宙ステーションへのドッキングミッションであり、補給船としての能力を実証する機会となりました。

打ち上げとドッキング

コスモス1267号は、1981年4月25日にカザフスタンのバイコヌール宇宙基地からプロトンロケットによって無人で打ち上げられました。軌道投入後、機体は自動航行システムによって誘導され、打ち上げから57日後の1981年6月19日に、サリュート6号の先端側ポートに自動ドッキングを成功させました。

技術的意義

コスモス1267号のような大型の構造物（約18トン）を、既に軌道上に存在する宇宙ステーションに結合させるという技術は、単なる小型補給船のドッキングとは異なり、大きな技術的課題を伴いました。この成功は、後のミール宇宙ステーションや現在の国際宇宙ステーション（ISS）のように、複数の大型モジュールを軌道上で連結して巨大な構造物を組み立てるという、宇宙ステーションの発展コンセプトを実証する上で、非常に重要な一歩となりました。これは、宇宙空間でのモジュール式建設という新たな時代の幕開けを告げる試みの一つであったと言えます。

その後の運用と終焉

コスモス1267号はその後もサリュート6号と結合した状態を維持し、ステーションの運用の一部として機能しました。しかし、サリュート6号自体の運用が終了するのに伴い、1982年7月29日、コスモス1267号はサリュート6号本体と共に軌道を離脱するプロセスに入り、大気圏に再突入して消滅しました。

TKS計画における位置づけ

コスモス1267号は、TKS宇宙船の全体計画における2回目の試験飛行にあたります。初めてのTKSミッションは1977年7月に行われた無人のコスモス929号で、これはアルマース計画向けの初期テスト飛行でした。コスモス1267号に続く3回目のTKS飛行は、1983年3月のコスモス1443号（サリュート7号にドッキング）であり、これも無人での運用でした。

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