コスモス772号

コスモス772号（Kosmos 772）

コスモス772号は、1975年にソビエト連邦によって実施された、新型宇宙船の技術試験を目的とした無人ミッションです。この宇宙機は、「ソユーズ7K-S」と呼ばれる形式のプロトタイプであり、その開発は将来的な軍事目的での利用を視野に入れて進められていました。しかし、残念ながらコスモス772号の飛行は、当初計画されていた全ての目標を達成することができず、ミッションは失敗という結果に終わりました。

ミッションの概要

コスモス772号は、1975年9月29日にバイコヌール宇宙基地から打ち上げられました。使用された宇宙船は、その設計質量が6,750kgに及ぶソユーズ7K-S型でした。この飛行は完全に無人で行われ、人間の乗組員は搭乗していませんでした。

宇宙船は軌道投入後、初期軌道として近点154km、遠点245km、軌道傾斜角51.8度という楕円軌道に乗りました。これは比較的低高度な軌道であり、大気抵抗の影響を受けやすい環境です。

ミッション期間中、コスモス772号ではいくつかの軌道変更マヌーバが実行されました。これは、新型ソユーズ7K-Sの搭載する推進システムや軌道制御能力を評価するための重要な試験項目であったと考えられます。

具体的には、以下のような軌道変更が記録されています。

1回目の変更: 当時の軌道（約193km×270km）から、約195km×300kmへと変更されました。この操作には、約8m/sの速度増分（デルタV）が使用されました。
2回目の変更: 軌道が約196km×300kmの状態から、約196km×328kmへとさらに変更されました。ここでも約8m/sのデルタVが加えられました。

これらの軌道変更で合計16m/sのデルタVが消費されました。これらの操作は、宇宙船の機動性能やエンジンの信頼性を確認するための重要なデータを提供したと推測されます。

ミッション期間は約3.99日間に及び、宇宙船は1975年10月3日の協定世界時04時10分にその飛行を終了しました。無人試験飛行であったため、「着陸」という表現が用いられていますが、これはおそらく大気圏への再突入とそれに続く地球への帰還（着地または着水）を指していると考えられます。

ミッションの失敗について

コスモス772号のミッションは「失敗に終わった」と記録されています。しかし、具体的な失敗の原因や、どの試験項目が達成できなかったのかについての詳細な情報は、一般には公開されていません。新型宇宙船の初の実機による無人試験飛行において、予期せぬ技術的な問題が発生した可能性が考えられます。この失敗が、その後のソユーズ7K-S型の開発計画や、軍事目的の宇宙開発プログラムにどのような影響を与えたのかは不明ですが、貴重な教訓となったことは間違いないでしょう。

このミッションに関する情報は、主にNASAのNSSDC (National Space Science Data Center) Master Catalogなどの公的な記録から得られています。

コスモス772号は、ソビエト連邦が新型宇宙船の開発において直面した技術的な課題を示す一例であり、宇宙開発における試験飛行の重要性とそれに伴うリスクを物語っています。

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