コドリ渓谷

コドリ渓谷の概観

コドリ渓谷（Codori Valley）は、ジョージア（グルジア）のアブハジア自治共和国北東部に位置する自然の美しい渓谷です。この渓谷は、コドリ川の上流に広がり、高山性の気候で知られています。標高は1,300メートルから3,984メートルにわたる範囲で、雪に覆われた山々や針葉樹林が広がる多様な風景が楽しめます。ジョージア本国との行政境界線から約30キロメートル、アブハジアの首都スフミからは約65キロメートルの距離にあります。

この地域は複雑な歴史を有し、1993年以降はジョージア政府の直轄統治下にあり、「上アブハジア」として知られていますが、2008年にロシア軍とアブハジア共和国軍が侵攻したことで、その支配権が変貌を遂げました。

自然環境

コドリ渓谷は、気候において特に高山性と見なされ、冬季には豊富な積雪を見ることができます。年間降水量は1,600ミリメートルから2,000ミリメートルを超え、一年の半分以上、つまり30日以上は大雨が観測されるため、湿潤な気候の影響を受けています。月別の平均気温は、1月に氷点下3度から、最高で7月に28度と、季節ごとに変化に富んでいます。

上流部には、ラタ、オマリシャラ、ゼモ・アジャラと呼ばれる村が点在しており、これらの地域に住む人々は主にスヴァン人として知られています。国勢調査によると、2002年には1,956人がこの地域に住んでおり、ほとんどがジョージア人でした。近年、人口は減少しているものの、依然としてこの地域にはジョージア人のコミュニティが存在しています。

歴史的背景

アブハジアは、1810年から1864年の間にロシア帝国に併合されました。その過程で、コドリ渓谷の多くはアブハジア公国の支配から独立した状態を維持していましたが、1866年のリフニ蜂起以降、ロシア帝国はアブハズ人に対する圧力を強め、多くの人々がオスマン帝国に逃れる結果となりました。これにより、コドリ渓谷は相対的に過疎化が進行しました。

近代に入ると、コドリ渓谷はアブハジア紛争の影響を強く受けます。1994年には、アブハジア共和国の軍によりラタの村が占拠され、以降は停戦ラインが引かれることになりました。国際連合が派遣した監視団の存在は、コドリ渓谷の安定を保つ上で重要な役割を果たしましたが、同時に地域内での緊張は継続し、様々な事件が発生しています。

近代的な出来事

2001年には、チェチェン共和国の軍がこの地域に侵入し、ジョージアとアブハジアの緊張を再燃させました。これを受け、ロシア軍は介入し、地域の状況は一層複雑化しました。また、2006年には地元民兵による内乱が発生し、ジョージア政府が軍を派遣して事態を収束させました。

2008年の南オセチア紛争では、アブハジア共和国軍が再び攻撃を開始し、コドリ渓谷の大部分を制圧しました。このように、コドリ渓谷は125年にわたる歴史を経て、地域の政治情勢の変動が続く場所となっています。

総括

コドリ渓谷は、その自然環境の美しさだけでなく、複雑な歴史背景を持つ地域です。この地域の住民は、その多様な文化や伝統を守り続けており、今日もなお、その存在はジョージア全体の歴史や文化と深く結びついています。

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