コノン・ド・ベテュヌ

コノン・ド・ベテュヌ（1150年頃 - 1219年/1220年）は、中世フランスのトルヴェール（吟遊詩人）であり、十字軍の参加者としてもその名を歴史に刻んでいます。彼は旧アルトワ地方（現在のパ＝ド＝カレー県）で、ベテュヌ領主ロベール5世の息子として生まれました。彼の家系はフランドル伯のエノー家とも繋がりがあり、1180年にはフランス王フィリップ2世とイザベル・ド・エノーの婚礼に出席、自作の歌を披露したと伝えられています。

十字軍への参加と政治的活動

コノンは第3回十字軍に参加した後、第4回十字軍にも兄弟のギヨームと共に参加しました。この十字軍では、フランドル伯ボードゥアン9世の騎士としてだけでなく、弁論家としても活躍し、その雄弁と知恵、騎士道精神はジョフロワ・ド・ヴィルアルドゥアンによって高く評価されました。コンスタンティノポリス攻略後にはラテン帝国の宮廷で重臣となり、ボードゥアンとボニファチオ・デル・モンフェラートとの和解、アドリアノープルの戦いなど、帝国の命運を左右する重要な場面で役割を果たしました。1219年に女帝ヨランドが亡くなると、帝国の摂政に選出されますが、その直後に自身もこの世を去りました。

詩人としてのコノン・ド・ベテュヌ

現存するコノンの作品とされる詩はわずか14点であり、その中には真作かどうか疑わしいものも含まれています。彼はカンブレーの城主ユオン・ドワシーから詩作の手ほどきを受け、その詩は歌われることを前提として書かれ、10点には曲が付けられています。彼の詩の多くは宮廷での愛をテーマにしていますが、特筆すべきは2点の「十字軍の歌」です。これらの歌では、愛する人との別れを嘆きつつも、十字軍という「高貴なる使命」を受け入れざるを得ない詩人の葛藤が描かれています。コノンの詩には、時に皮肉や風刺の要素も含まれており、「十字軍の歌」の一つでは、十字軍のための募金活動家の浪費に対し、激しい言葉で非難しています。

コノン・ド・ベテュヌは、中世ヨーロッパの激動の時代を生き、詩人として、政治家として、そして騎士として、多岐にわたる才能を発揮した人物でした。彼の作品は、当時の社会情勢や人々の感情を伝える貴重な資料であるとともに、現代においても人々の心を揺さぶる普遍的な魅力を持っています。

参考文献

Hasenohr, Geneviève and Michel Zink, eds. Dictionnaire des lettres françaises: Le Moyen Age. Collection: La Pochothèque. Paris: Fayard, 1964.

外部リンク

Conon de Béthune's chanson Ai! amours, com dure departie
* ベテュヌの「十字軍の歌」

もう一度検索