コブザ

コブザ（Кобза）

ウクライナの伝統楽器コブザは、リュート型または洋梨型の独特な形を持つ撥弦楽器です。主に東ウクライナで広く用いられ、豊かな音色と半音階調弦の特徴が魅力です。コブザは、しばしば現代のバンドゥーラの原型と考えられ、両者はしばしば同一視されますが、実際には異なる演奏技法と構造を有しています。

コブザの特徴と演奏技法

コブザの演奏では、フレットボード上の弦を左手の指で押さえ、リュートのような技術を用いて演奏されます。特徴的な短い弦、プリストルンカは、主に飾り音や間奏に利用され、ボーカルパートは楽器の演奏とほとんど重複しません。装飾的な演奏スタイルが強調され、特に後期の「コサック」サイクルの叙事詩、ドゥーマの演奏において重要な役割を果たします。コブザは、無限の表現力を持つ楽器として、音楽の伝統を支えてきました。

起源と歴史

コブザという名称は、13世紀の文献にも登場し、民間の撥弦楽器として記録されています。17世紀から19世紀にかけてのイコノグラフィでは、コブザに似た楽器が描かれていますが、版画の性質上、正確さには限界があります。現存する最古のコブザは15世紀から16世紀のものとされ、当初はマンドーラに似たリュート型の楽器でした。この楽器は「ラテン風のバンドゥーラ」とも称され、一時は人気を誇りましたが、やがて新たな楽器や改良版に取って代わられました。

コブザは、ウクライナ・コサックの間で広がり、盲目の旅芸人コブザールたちはその豊かな音楽を持ち運んで、さまざまな場で演奏しました。彼らは歴史的な叙事詩や、民俗歌を広める重要な役割を果たしました。特に1584年のポーランドの記録では、コサックが「コブザを演奏し歌う」とされ、楽器の存在証明の一つとなっています。

コブザの進化

コブザはリュートと深い関係を持ちつつも、独自の発展を遂げてきました。特に有名な音楽家たち、例えばティモフィー・ビロフラーツィクィーやオスタプ・ヴェレサイなどがその演奏技術を高め、コブザの名声を広めました。20世紀には、音楽の形式が変わり、様々なフレット付きのコブザが登場し、その演奏スタイルも進化しました。

1970年代には、現代的なテクノロジーを利用した楽器製作が進み、より多様化したコブザが誕生しました。この時期には、ウクライナの民俗楽器オーケストラが導入したフレット付きコブザや、特定の調弦スタイルに基づく伴奏用のコブザが製作され、多くの演奏家によって演奏されることとなりました。

現在の状況と未来

コブザは今でもウクライナの伝統音楽において重要な位置を占め、現代の音楽シーンでもその音色が新たな形で受け継がれています。また、コブザはウクライナ文化の象徴として、国のアイデンティティを示す役割を果たしています。音楽愛好家や研究者にとっても、コブザの進化とその歴史は探究の対象となっており、今後もウクライナの音楽文化に貢献し続けるでしょう。

もう一度検索