コブザール (詩集)

コブザール

ウクライナの著名な詩人タラス・シェフチェンコによる詩集『コブザール』は、1840年にロシア帝国のサンクトペテルブルクで初めて出版され、ウクライナ文学の中で特に重要な作品として評価されています。この詩集の名称は、ウクライナの伝統的な吟遊詩人を指す言葉から来ており、シェフチェンコ自身もこの作品の影響により「コブザール」と呼ばれるようになりました。

初版の概要と収録詩

『コブザール』の初版には、8つの詩が収められており、これらはウクライナの民衆の生活や歴史的英雄に焦点を当てています。この初版は、サンクトペテルブルクの印刷所で1000部発行されたものの、ロシア帝国の厳しい検閲の影響で多くのページが破棄され、最終的に114ページのみが流通しました。

収録されている詩は以下の通りです：

• - 「わが思いよ、わが思いよ、汝らはわが破滅なり」
• - 「ペレベンジャ」
• - 「カテリーナ」
• - 「ポプラ」
• - 「想い」
• - 「なぜ私は黒い眉を持たねばならぬのか」
• - 「オシノヴヤネンコへ」
• - 「イヴァン・ピドコーヴァ」
• - 「タラスの夜」

これらの作品では、当時のウクライナの農民の苦しみや自由への渇望が表現されており、シェフチェンコの詩はウクライナ語文学の地位を確立する重要な役割を果たしました。

出版歴

シェフチェンコは生前に『コブザール』の改訂版を数回発表し、1844年および1860年に新たな版を出版しました。特に1860年の版は、ウクライナの慈善家プラトン・シィミレンコの支援を受けて17曲の詩を含む充実した内容となっています。しかし、検閲のために『夢』や『カフカス》等の詩は収録できませんでした。

また、ロシアの検閲を逃れるため、一部の詩は国外で出版され、1859年にはライプツィヒで詩人の友人たちによってごく少数ながら刊行されました。

文化的意義

『コブザール』は単なる詩集ではなく、ウクライナの文化と歴史を深く掘り下げた作品であり、特に国民的なアイデンティティの形成に寄与しました。シェフチェンコの詩は、名も無き民衆の声を代弁し、ウクライナ文化の復興へとつながりました。

ソビエト時代には検閲が厳しくなったものの、ウクライナ系ディアスポラの活動によって英訳や他の多くの言語に翻訳され、国際的な認知が高まりました。例えば、2013年にはピーター・フェディンスキーによる英訳が出版され、ますます多くの人々に影響を与えています。

まとめ

タラス・シェフチェンコの『コブザール』は、ウクライナ文学の重要な基盤を築き、国民の文化的アイデンティティを象徴する作品として、今なお多くの人々に愛されています。この詩集を通じて、ウクライナの社会と歴史の覚醒が呼び起こされたことは、後世にも影響を与え続けているのです。

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