コミューン (スウェーデン)

スウェーデンのコミューン：基礎自治体と社会福祉

スウェーデンにおけるコミューン（kommun）は、基礎自治体を指す言葉です。フランスのコミューン制度を起源とし、日本の市町村と同様の役割を担いますが、人口規模や面積に関わらず、すべての基礎自治体がコミューンと呼ばれます。この点において、日本の市町村制とは異なる側面を持っています。

歴史的な変遷：大合併とコミューンの数

スウェーデンは歴史的に農村人口が多く、過疎地域への差別的な扱いは見られませんでした。現在、スウェーデンには290のコミューンが存在しますが、これは長年の変遷を経て形成された数です。

1862年の改革以前は、都市部と地方部のコミューンはそれぞれ異なる地方自治令に基づいて運営されていました。この状況は、1952年と1962年の2回にわたる大規模な市町村合併によって変化しました。

最初の合併（1952年）では、コミューンの数は約2500から1037に大幅に削減されました。2回目の合併（1962～1974年）は、1969年からは国会決議により強制合併となり、1974年に完了しました。この合併の後、当初合併に反対していた一部コミューンが分割されるなどし、現在の290のコミューン数となりました。

コミューンの主な責務：教育と社会福祉

コミューンは、住民の生活に密着した幅広い行政サービスを提供しています。その主な責務は、教育と社会福祉です。

コミューンの主な業務:

教育: 児童ケア、就学前教育、初等教育、中等教育
社会福祉: 社会的サービス、高齢者ケア、障害者支援
保健衛生: 公衆衛生、環境衛生（医療はランスティングの責務）
その他: 緊急サービス（警察を除く）、都市計画、衛生（浄水、ゴミ処理）

多くのコミューンでは、これらの責務に加えて、若者活動支援や住居支援サービスなども提供しています。医療については、ランスティング（landsting、現在は地域圏（region）に改称）と呼ばれる別の行政機関が管轄しています。これは、スウェーデンの福祉システムにおける役割分担を示しています。

コミューンの特徴：均質なサービス提供

日本の市町村と比較すると、スウェーデンのコミューンは、人口規模や地域特性に関わらず、比較的均質な行政サービスを提供している点が特徴です。これは、スウェーデンの福祉国家としての理念と、歴史的に積み重ねられてきた地方自治制度の成果と言えるでしょう。また、規模の大小に関わらず「コミューン」と統一的に呼ばれることで、地域間の格差を意識させない効果もあると考えられます。

まとめ

スウェーデンのコミューンは、教育と社会福祉を中核とした、住民生活に密着した行政サービスを提供する重要な役割を担っています。歴史的な大合併を経て現在の体制に至り、均質なサービス提供を特徴としています。日本の市町村制とは異なる点も多く、スウェーデンの福祉国家モデルを理解する上で重要な要素です。

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