コモンウェルス・エアクラフト

コモンウェルス・エアクラフト社(CAC)の歴史：オーストラリア航空産業の礎

コモンウェルス・エアクラフト社（Commonwealth Aircraft Corporation、略称CAC）は、オーストラリアにおける航空機製造の中核を担った企業として、同国の航空史に大きな足跡を残しました。第二次世界大戦前夜の1935年、オーストラリアの資源開発会社ブロークン・ヒル・プロプライエタリ（BHP）をはじめとする企業の協調と政府の支援によって設立されました。設立の背景には、当時、ヨーロッパの情勢不安を鑑みて、オーストラリア自身の航空機製造能力の強化が急務とされたことがありました。

CACは設立当初から、イギリスからの航空機供給に頼らない、オーストラリア独自の航空機開発・生産体制の確立を目指しました。その実現に大きく貢献したのが、オーストラリア人航空技術者、ローレンス・ワケットです。CACは設立直後、トゥガン・エアクラフト社を買収し、ワケットをゼネラルマネージャーとして迎え入れました。ワケットの指導の下、CACはノースアメリカン社のNA-16練習機をライセンス生産したワイラウェイを最初の製品として生み出しました。ワイラウェイは、オーストラリア空軍の主要な訓練機として活躍し、CACの基礎を築く上で重要な役割を果たしました。

ワケットの技術と指導力によって、CACはその後も、オーストラリア独自の設計による航空機の開発に成功しました。その代表的な例が、ブーメラン戦闘機とワケット練習機です。ブーメランは、独特の双発機構造と高い操縦性能を誇り、太平洋戦線で活躍しました。ワケットは、ワイラウェイの後継機として開発された国産練習機として、オーストラリア空軍のパイロット養成に貢献しました。しかしながら、戦争終結後、CACのジェット機開発計画は、本格的な量産に至ることはありませんでした。

戦後、CACは、ノースアメリカン社のセイバー戦闘機や、アエルマッキ社のMB-326H高等練習機、ベル社のカイオワ観測ヘリコプターなどをライセンス生産するなど、海外技術の導入による事業の多角化を図りました。しかし、オーストラリアの航空機産業を取り巻く環境の変化や市場競争の激化もあり、1985年にはデ・ハビランド・オーストラリア社の完全子会社となり、その後も企業合併を繰り返し、2000年にはボーイング・オーストラリア社に吸収合併されました。CACは独立企業としての歴史に幕を閉じましたが、その技術と経験は、後のオーストラリア航空産業の発展に多大な影響を与えたと言えるでしょう。

CACの主な製品

CACは、その歴史の中で数多くの航空機を設計・製造しました。その中には、オーストラリア空軍の主力機種となったものもあれば、試作段階にとどまったものもあります。以下に、CACの代表的な機種を挙げ、その特徴を紹介します。

ワイラウェイ (CA-1, CA-3, CA-5, CA-7, CA-8, CA-9, CA-16): ノースアメリカンNA-16のライセンス生産機。オーストラリア空軍の主要な訓練機として長年にわたって活躍しました。
ブーメラン (CA-12, CA-13, CA-14, CA-19): オーストラリア独自の設計による双発軽爆撃機。太平洋戦線で活躍しました。
ワケット (CA-2, CA-6): ローレンス・ワケット設計による練習機。ワイラウェイの後継機として開発されました。
ウーメラ (CA-4, CA-11): 試作軽爆撃機。量産には至りませんでした。
CA-15: 試作単座戦闘機。非公式には「カンガルー」と呼ばれました。
ウィンジール (CA-22, CA-25): オーストラリア設計の単発軽戦闘機。
セイバー (CA-26, CA-27): F-86 セイバーのライセンス生産機。
MB-326 (CA-30): イタリアのアエルマッキ社製の高等練習機のライセンス生産機。
* カイオワ (CA-32): アメリカのベル社製の観測ヘリコプターのライセンス生産機。

これらの機種以外にも、CACは多くの航空機を生産し、オーストラリアの航空産業の発展に貢献しました。CACの歴史は、オーストラリアの航空機開発と製造の歩みそのものであり、その遺産は現代のオーストラリア航空産業にも受け継がれています。

参考文献

本文中に記載されている参考文献以外にも、CACに関する文献は多数存在します。興味のある方は、これらの文献を参照して、より詳細な情報を得ることができます。これらの文献は、CACの歴史や製品について、多角的な視点から解説しています。それぞれの文献が、独自の視点や資料に基づいて書かれており、CACの歴史をより深く理解するために役立ちます。

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