コヤニスカッツィ

『コヤニスカッツィ／平衡を失った世界』

『コヤニスカッツィ／平衡を失った世界』は、1982年に公開された先進的なドキュメンタリー映画で、監督はゴッドフリー・レッジョ、音楽はミニマリスト作曲家フィリップ・グラスが担当しています。本作は、アメリカの様々な都市や自然の風景をスローモーションや微速度撮影を駆使して映し出し、視覚と聴覚で観る者に強い印象を与えます。特筆すべきは、一切のナレーションや会話が存在しないため、映像そのものが観客に深いメッセージを伝えます。

構造と内容

映画のタイトル「コヤニスカッツィ」は、ホピ語で「常軌を逸し、混乱した生活」や「平衡を失った世界」を意味します。この言葉は、現代人の生活様式への重要な考察から生まれており、映像と音楽の組み合わせにより、現代社会のバランスの欠如を強調しています。

『コヤニスカッツィ』は、実質的には「カッツィ三部作」の第一作で、その続編である『ポワカッツィ』(1988年)と『ナコイカッツィ』(2002年)も同様のテーマを異なる視点から探求しています。三部作全体で、人間と自然、そしてテクノロジーとの関係性を深く掘り下げる内容が展開されます。本作は特にカルトフィルムとして広く知られており、その革新的なスタイルは多くの視聴者に影響を与えています。

具体的なシーンの解説

映画は、冒頭にホースシュー・キャニオンに残されたフレモント族の絵文字を写し出します。次に、アポロ12号計画の打ち上げシーンに移り、次第に荒涼とした自然の景観へとフェードアウトまたはシームレスにつながります。続けて、自然界における人間の介入が映像で示され、刈り取られた農地や採掘トラックなどが映し出されます。この流れの中で、観客が思わず考えさせられる人間の活動の影響を暗示しています。

「Vessels」というチャプターには、ボーイング747の滑走シーンが長時間映され、ダイナミックな交通の流れを表現します。続いて「Cloudscape」では、人間と自然が交錯するシーンが織り込まれ、ニューヨーク市の摩天楼に影を落とす雲を透視することで人の営みと自然の営みを交差させています。

「Pruitt-Igoe」では、かつての団地が崩壊し爆破される映像が報告され、モダニズム建築の失敗を示唆しています。続く「Slow-People」では、混雑する空港の様子が早回しで描かれ、都市生活の急速さを強調しています。

もう一度検索