コレヒドール戦記

コレヒドール戦記 (1945) - 太平洋戦争初期、魚雷艇部隊の苦闘

ジョン・フォード監督による1945年のアメリカ映画『コレヒドール戦記』は、ウィリアム・リンゼイ・ホワイトの同名小説を原作とし、太平洋戦争初期のフィリピンを舞台に、アメリカ海軍のPTボート部隊、第3魚雷艇戦隊の奮戦を描いた作品です。

作品概要

本作は、フィクションでありながら、実際の出来事や人物をモデルにしています。ロバート・モンゴメリー演じるジョン・ブリックリー大尉は、ジョン・D・バルクリー、ジョン・ウェイン演じるラスティ・ライアン中尉は、ロバート・ケリーをそれぞれモデルとしています。

映画は、当時の海戦の様子を比較的忠実に再現しており、太平洋戦争におけるアメリカ軍の苦戦と、兵士たちが「消耗品」として扱われるという、やりきれない悲しさを描いています。戦意高揚を目的とした従来の戦争映画とは異なり、厭戦的な雰囲気が漂う異色作として知られています。

ストーリー

1941年12月、ジョン・ブリックリー大尉は、フィリピンのカビテを拠点とするPTボート部隊を指揮していました。彼は、ブラックウェル提督にPTボートの性能をアピールしますが、提督はその実用性に懐疑的です。ブリックの友人であるラスティ・ライアン中尉は、戦闘への参加を熱望していましたが、真珠湾攻撃を機に、フィリピンも戦火に巻き込まれます。

ブリックの部隊は、当初は戦闘から遠ざけられ、輸送任務などに従事しますが、基地への攻撃を受け、ついに日本軍の巡洋艦攻撃を命じられます。攻撃は成功を収めますが、フィリピンの戦況は悪化の一途を辿ります。ラスティは、看護師のサンディ・デイヴィスと恋に落ちますが、戦況はそれを許しません。

部隊は、マッカーサー元帥とその側近をミンダナオ島へ脱出させる任務を遂行。その後も、日本軍への抵抗を続けますが、戦力は徐々に消耗していきます。ラスティのボートが損傷した後、最後のPTボートは修理のために造船所に立ち寄りますが、差し迫った日本軍の攻撃を前に、人々は脱出を余儀なくされます。造船所のノウランドは、その場に留まることを決意し、ライフルを手に最期を迎えます。

最後の巡洋艦攻撃で、ラスティのボートは沈没。残されたブリックのボートも陸軍に引き渡され、メッセンジャー任務に格下げされます。ブリックとライアンは、アメリカ本土でPTボートの訓練を行うよう命じられ、帰国します。しかし、バターンに取り残されたサンディの運命は不明のまま、物語は幕を閉じます。

生き残った下士官たちは、ライフルを手に、陸軍の残党やフィリピン・ゲリラと共に抵抗を続けることを選びます。彼らは、以前のPTボートと同じように戦いの消耗品(expendable)として。

特筆すべき点

ダンスシーン: カフェの暗がりで、ドナ・リードがジョン・ウェインの右手の傷をかばうように踊るシーンは、蓮實重彦によって「アマチュアであることの特権」を体現した、フォード作品における「唯一にして最高の踊り」と評されています。
「ディア・オールド・ガール」: 晩餐会で歌われる「ディア・オールド・ガール」は、蓮實重彦によってフォード作品における「唯一にして最高」の歌声であり、女性への敬意を込めた讃歌の最も古いものとされています。

受賞歴

アカデミー録音賞ノミネート
アカデミー特殊効果賞ノミネート

『コレヒドール戦記』は、単なる戦争映画ではなく、戦争の悲惨さ、人間の尊厳、そして希望を描いた作品として、今もなお多くの人々に感動を与え続けています。

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