コロス

古代ギリシア劇におけるコロスの役割と変遷

古代ギリシア劇において、コロス（χορός, khoros）は、劇を理解する上で欠かせない重要な要素でした。単なる合唱隊ではなく、物語の背景説明、テーマの注釈、観客への導き、登場人物の心情表現など、多様な役割を担っていました。本稿では、コロスの役割、劇における重要性の変遷、そして演出方法について詳しく解説します。

コロスの多様な役割

コロスの起源は、ディテュランボスや悲劇の起源と深く関わっているとされています。初期のギリシア劇では、登場人物が一人しかいない状況において、コロスは物語を語る重要な存在でした。観客に対しては、劇の背景やあらすじを伝え、劇全体のテーマを解説する役割を果たしました。さらに、理想的な観客の反応を示すことで、劇への理解を深める手助けをしました。

コロスは、劇中の一般大衆を代表することもありました。登場人物が口にすることができない恐怖や秘密といった感情を代弁し、劇に奥行きを与えました。その表現方法は、歌が一般的でしたが、時には詩の朗読を行うこともありました。

コロスの重要性の変遷

悲劇や喜劇が抒情詩作品だった時代、コロスは劇の主要な構成要素でした。特に、アイスキュロスが複数人の俳優を導入する以前は、唯一の俳優に対する重要な相手役として、劇全体のバランスを保つ役割を果たしていました。しかし、紀元前5世紀以降、劇の構成が変化するにつれて、コロスは徐々にその重要性を失っていきました。

ソポクレスのような後期の劇作家は、以前の作家ほどコロスに依存しなくなりました。ソポクレスの『オイディプス王』に見られるように、コロスは「解説者」としての役割が強まりました。物語全体の教訓性を補強し、登場人物たちに洞察を与える存在として、登場人物と解説者の中間に位置づけられるようになりました。

コロスの演出

コロスは、1～3人の俳優による劇を補完する役割も担っていました。古代ギリシアの円形劇場は非常に大きかったため、遠くの観客にも理解できるように、コロスの動きは誇張され、発声も明確に行われました。技術的には、シンクロナイゼーション（同期性）、エコー効果、波紋のような動き、身体表現などが駆使され、仮面を使用することで、表現力を高めていました。

まとめ

古代ギリシア劇におけるコロスは、単なる合唱隊を超えた、多様な役割を担う重要な存在でした。その役割や重要性は時代とともに変化しましたが、劇の理解を深める上で、常に重要な役割を果たしていたと言えるでしょう。コロスの存在は、古代ギリシア劇の独特な魅力を理解する上で、欠かせない要素となっています。

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