コンスタンティン・スコロプイシュヌイ

コンスタンティン・イーゴレビチ・スコロプイシュヌイの救出劇

1990年、ソビエト連邦の末期に、ロシア・サハリン州に住む3歳の少年、コンスタンティン・イーゴレビチ・スコロプイシュヌイ（愛称：コンスタンチン君）が家庭内事故で大火傷を負うという事件が発生しました。彼は母親が日常の家事で使っていた熱湯に不運にも落下し、その結果、全身の90%に及ぶ重度の火傷を負ってしまったのです。この事故は後に多くのメディアで報道され、国際的な注目を集めることになりました。

事故とその後の経過

1990年8月20日、家庭内での事故は起きました。当時26歳だった母親が、断水で湯が出ないためにバケツに電熱棒を入れて水を温めている最中、コンスタンチンは熱湯に落ちてしまいました。母親は彼をユジノサハリンスク州立小児病院に急遽搬送しましたが、医師たちからは「ここでは手の施しようがない」との厳しい言葉が返されました。火傷の程度が深刻で、残された命はあとわずかしかないと言われ、コンスタンチンの家族は絶望的な状況に置かれていました。

日本への緊急搬送

しかし、たまたま近所に住む日本人が、コンスタンチンの救助の可能性を示唆しました。この情報をもとに彼の母親は、緊急に日本へ搬送する手続きを始めます。8月27日の午前中、北海道庁の職員がコンスタンチンの状況を把握し、外務省、法務省との協議の結果、特例としてサハリンからの搬送が決定しました。この緊急呼びかけが契機となり、コンスタンチンはしばらくして救援機で日本へ向けて離陸することができました。

日本での治療と回復

無事に日本の北海道に到着後、コンスタンチンは札幌医大病院に入院。ここで彼は皮膚移植手術を受けることになります。手術には、東京から取り寄せられた人皮と人工皮膚が使われ、数回にわたる手術を経て、ついに彼の意識が回復しました。家族の支えを受けたコンスタンチンは、継続的な治療のおかげで着実に回復し、最終的には命を救われることとなりました。

その後の人生

治療から数年後、コンスタンチンは健康を取り戻し、運送業に就くことに。その後、彼は家庭を持ち、妻と子供とともに幸せに暮らしています。1992年には、治療に寄せられた義援金の残りを基にした「公益信託北海道・ロシア極東医療交流基金」が設立され、この基金は毎年北海道とサハリン間での医療技術の勉強会資金に利用されています。この出来事は、冷war 名終結期における日本と旧ソ連の関係改善のきっかけともなり、国境を越えた友情を象徴するエピソードとなりました。

この救出劇は、2000年7月にNHKのドキュメンタリー番組『プロジェクトX〜挑戦者たち〜』においても放送され、多くの人々に感動を与えました。コンスタンチン君の生命を救った医療の力は、当時の国際関係にも大きな影響を与えたことを忘れてはなりません。

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