コントロール (2004年の映画)

『コントロール』（2004年、アメリカ）は、数々の凶悪犯罪で死刑判決を受けたリー・レイ・オリヴァーを主人公とするサスペンス映画です。

リー・レイは、死刑執行の致死注射を受けますが、薬物がすり替えられていたため生き延びます。彼を生き返らせたのは、脳科学の権威であるコープランド博士でした。博士は、リー・レイに自身の開発した新薬「アナグレス」の実験台になるよう持ちかけます。これは、被験者の暴力性を抑制する画期的な薬ですが、その効果は未知数でした。死を免れる代わりに、リー・レイは博士の研究に協力せざるを得ない状況に置かれるのです。

研究施設で実験が始まります。リー・レイは、凶暴性を抑えきれず、度々脱走を試み、研究員たちに危害を加えます。しかし、実験が進むにつれ、彼の心身に変化が現れ始めます。罪悪感や自責の念といった、これまで彼には見られなかった感情が芽生え始めたのです。

この変化を捉えたコープランド博士は、実験の第二段階に踏み切ります。それは、リー・レイを社会に放出し、一般市民の中で生活させるという、極めて危険な試みでした。外部社会でのリー・レイの行動、そして彼の心境の変化が、物語のクライマックスへと繋がっていきます。

リー・レイ役には、レイ・リオッタ。彼の持つ独特の雰囲気とカリスマ性が、死刑囚という複雑な役柄に深みを与えています。そして、彼を操る冷徹な脳科学者コープランド博士を演じるのは、ウィレム・デフォー。彼の圧倒的な存在感は、物語全体に緊張感をもたらしています。

この映画は、死刑制度や人間の凶暴性、更生への可能性といった重いテーマを扱っています。しかし、単なる社会派ドラマではなく、スリリングな展開と、予測不能な結末で観客を魅了します。

レイ・リオッタとウィレム・デフォーの圧巻の演技、そして予想を裏切るストーリー展開は、見る者の心に深い印象を残すでしょう。人間の深層心理を突くサスペンスとして、そして、人間の可能性を問いかけるドラマとして、『コントロール』は高く評価できる作品です。

監督はティム・ハンター、脚本はトッド・スラヴキンとダーレン・スウィマーが担当。その他、ミシェル・ロドリゲス、スティーヴン・レイ、ポリー・ウォーカーら実力派俳優陣が脇を固めています。彼らの演技もまた、この映画の質を高める上で大きな役割を果たしています。

『コントロール』は、人間の心の闇と光、そして科学の倫理という複雑なテーマを、緊迫感溢れる展開と見事な演技で描き切った、忘れ難い一本と言えるでしょう。一度鑑賞したら、その余韻にしばらく浸ることになるかもしれません。

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