コンパクトクランク

コンパクトクランク：進化の歴史と現代への影響

近年、ロードバイクやマウンテンバイクにおいて広く普及しているコンパクトクランク。これは、チェーンホイールの歯数を小さくすることで、軽いギア比を実現したクランクセットです。本稿では、コンパクトクランクの進化の歴史と、それが現代のサイクリングシーンに及ぼす影響について詳しく解説します。

ギア比の小型化：歴史を振り返る

ロードバイクとマウンテンバイクのギア比は、時代とともに小型化の傾向を辿ってきました。

ロードバイク

1950～60年代は、50t-44tという大きな歯数のクランクが一般的でした。その後、60年代後半から80年代にかけて52t-42tへと小型化が進み、1970～1999年頃まではこれが標準となりました。1991年頃からは52t-39t、そして2000年代以降は50t-34tと、さらに小型化が加速しています。

マウンテンバイク

マウンテンバイクでも同様の傾向が見られます。1970～80年代前半は48t-38t-28tといった歯数でしたが、時代とともに小型化が進み、現在では42t-30t-20tといったギア比が一般的になっています。

特に、2000年代以降のインナーギア（小さい方のチェーンリング）の小型化は顕著で、これが「コンパクト化」として認識されています。

コンパクトドライブの普及：背景にあるもの

コンパクトドライブは、製品としては以前から存在していました。しかし、競技の世界では長い間異端視され、愛好家の間でも一般的ではありませんでした。

転機となったのは、1990年代前半のマウンテンバイクと2000年代のロードバイクの世界です。ランス・アームストロング選手が、軽いギア比で高回転数の走法でツール・ド・フランスで活躍したことで、この走法の有効性が広く認識されるようになりました。

従来、52t-42tのような大きなギアは、プロ選手やハイアマチュアのみに適したものでした。しかし、ロードバイク愛好者の裾野が広がり、体重や体格の異なる様々な人がロードバイクに乗るようになると、従来のインナーギアの大きさが問題視されるようになりました。

そこで、アマチュアでも無理なく回せる軽いギア比を実現したコンパクトドライブが脚光を浴びるようになったのです。

現代のサイクリングシーンにおけるコンパクトクランク

現在では、コンパクトドライブは広く受け入れられています。グランツールのようなトップレベルのレースでも、山岳ステージでは多くの選手がコンパクトドライブを使用しています。

シマノ、スギノテクノ、カンパニョーロ、SRAMなど、主要なコンポーネントメーカーはこぞってインナー34tのクランクセットを製造・販売しており、その普及ぶりは目覚ましいものがあります。

まとめ

コンパクトクランクは、ギア比の小型化という歴史的流れの中で生まれた技術です。その普及は、競技レベルの変化、そしてサイクリング人口の増加という社会的な背景と密接に関連しています。現代のサイクリングシーンにおいて、コンパクトクランクはもはや欠かせない存在となっています。

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