コーダ あいのうた

『Coda コーダ あいのうた』：少女の夢と家族の絆

『Coda コーダ あいのうた』（CODA）は、2021年に公開されたアメリカ、フランス、カナダ合作の映画です。監督はシアン・ヘダーが務め、聴覚障害を持つ家族の中で唯一耳が聞こえる少女、ルビーの成長を描いています。この映画は、2014年のフランス映画『エール!』の英語リメイク作品であり、アメリカ・マサチューセッツ州の港町グロスターを舞台に、家族との絆、夢への挑戦、そして自己のアイデンティティを模索する少女の姿を温かく、そして力強く描いています。

ストーリー

舞台はマサチューセッツ州グロスター。ルビー・ロッシは、漁師の家で生まれ育った女子高生です。家族は全員が聴覚障害者であり、彼女は幼い頃から家族の通訳としての役割を担ってきました。朝早くから漁を手伝う日々を送る一方で、ルビーには密かに歌手になりたいという夢がありました。高校の合唱サークルに入部したことがきっかけで、音楽教師のヴィラロボスは彼女の才能に気づき、名門音楽大学への進学を勧めます。しかし、家族の漁業を手伝う責任、そして歌への情熱の間で、ルビーは大きな葛藤を抱えることになります。家族は新事業を始めようとしており、彼女の通訳としての役割はますます重要になっていく一方で、ルビーは自分の夢と家族の期待の間で悩みます。

映画の魅力

この映画の魅力は、ルビーの成長物語と家族の絆を丁寧に描いている点にあります。聴覚障害を持つ家族との日常、家族を支えたいという気持ちと自分の夢を叶えたいという気持ちの間で揺れ動くルビーの姿は、多くの観客の共感を呼びました。特に、手話と歌を組み合わせた表現は、言語や文化の壁を超えて観客の心に深く響きます。家族がルビーの歌を「聞く」ことができないという状況は、聴覚障害者の置かれている状況を象徴的に示しており、感動を一層深めます。

キャストと制作

ルビー役を演じたのはエミリア・ジョーンズです。彼女は、ルビーの繊細な感情を豊かに表現し、観客を物語に引き込みました。ルビーの父親役をトロイ・コッツァー、母親役をマーリー・マトリン、兄役をダニエル・デュラントが演じました。彼らは実際に聴覚障害を持つ俳優であり、そのリアルな演技は作品に深みを与えています。特に、トロイ・コッツァーはアカデミー助演男優賞を受賞し、聴覚障害を持つ俳優がアカデミー賞を受賞した初めての例となりました。映画監督のシアン・ヘダーは、手話指導、ろう者の俳優の起用、ロケーション撮影など、徹底したリアリズムを追求し、観客に感動を与えました。

受賞と評価

『Coda コーダ あいのうた』は、2021年のサンダンス映画祭でワールドプレミアを迎え、観客賞、審査員賞などを受賞しました。その後、アカデミー賞では作品賞、脚色賞、助演男優賞の3部門を受賞し、その高い評価を証明しました。この作品は、聴覚障害者のコミュニティからも高い評価を受けており、聴覚障害者に対する理解を深めるきっかけになったと評価されています。しかし、聴覚障害者の経験を一面でしか描いていないという批判や、子供が親の通訳をする状況は適切ではないという意見も出ています。それにもかかわらず、映画は聴覚障害者に対する人々の認識を大きく変えるきっかけになったことは間違いありません。

映画が問いかけるもの

『Coda コーダ あいのうた』は、単なる感動的な家族ドラマにとどまらず、多くの問いを投げかけています。家族の絆、夢を追いかけること、自己のアイデンティティを確立すること、そして異なる文化や価値観を理解すること。これらのテーマは、多くの観客にとって他人事ではありません。この映画は、自分自身の生き方や価値観を見つめ直す機会を与えてくれるでしょう。

まとめ

『Coda コーダ あいのうた』は、少女の成長と家族の絆を描いた心温まる感動作です。聴覚障害を持つ俳優たちのリアルな演技、そして手話と歌を組み合わせた表現は、観客の心を強く揺さぶります。この映画は、多くの人々にとって忘れられない作品となることでしょう。

もう一度検索