コーナー・オブ・ジ・アース

ジャミロクワイ『コーナー・オブ・ジ・アース』：環境へのまなざしと音楽的進化

ジャミロクワイの楽曲『コーナー・オブ・ジ・アース (Corner of the Earth)』は、2001年発表のアルバム『ファンク・オデッセイ』からのシングルカットとして、2002年にリリースされました。この曲は、バンドのフロントマンであるジェイ・ケイの音楽的進化と、環境問題に対する彼の意識の変化を象徴する作品として知られています。

環境へのまなざしの変化

ジェイ・ケイは1991年のデビュー当時、環境破壊への怒りを歌詞に込めた楽曲を発表していました。しかし、『コーナー・オブ・ジ・アース』で歌われるのは、10年を経た穏やかな視点からの地球観です。初期の怒りや批判とは対照的に、この曲では地球の自然美を受け入れ、共存しようとする姿勢が表現されています。この変化は、リスナーに大きなインパクトを与え、話題を呼びました。

インスピレーション：自宅庭園とオーケストラ

楽曲のインスピレーション源として、ジェイ・ケイは1780年に造園家ハンフリー・レプトンによってデザインされた自宅庭園での時間を挙げています。この静かで美しい環境が、楽曲の穏やかな雰囲気と自然への賛歌を形作ったと言えるでしょう。

音楽的な面では、1999年の楽曲『キング・フォー・ア・デイ』で協業した作曲家サイモン・ヘイルとの再タッグが実現しました。ジェイ・ケイは、ヘイルによる弦楽器アレンジを高く評価しており、本作でもオーケストラサウンドを全面的に取り入れています。『キング・フォー・ア・デイ』では12人のオーケストラでしたが、『コーナー・オブ・ジ・アース』では、より豊かな音響を実現するため、弦楽器や金管楽器の種類を増やし、32人のオーケストラを編成。規模の拡大に伴い、自宅スタジオではなく外部スタジオでのレコーディングが行われました。

ミュージックビデオ：南アフリカでの撮影

2002年4月11日、南アフリカのケープタウン近郊にあるトカイ国立公園の森でミュージックビデオの撮影が行われました。南アフリカの風景をアラスカに見立て、人工の雪（羽毛）を使用するなど、壮大なスケールでの演出が施されています。

撮影は午後3時から10時半まで行われ、羽毛や焚き火を使用するため、犬たちの安全確保に細心の注意が払われました。撮影に協力したのは、現地の犬ぞり学校とアニマル・ラングラー（動物の管理や世話を専門とする職業の人）です。撮影の4日前には、ジェイ・ケイがウォーボンネットをかぶり、犬たちと時間を過ごすことで、撮影への慣れを促す準備も行われました。

メインの犬はアラスカン・マラミュートのメスで、その他にもシベリアン・ハスキーのミックス犬など複数の犬が登場します。映像は、自然との調和、そしてジャミロクワイの音楽における自然観を象徴する、印象的なものとなっています。

シングルカットと評価

『コーナー・オブ・ジ・アース』は、ジャミロクワイの他のシングルとは異なる、ややマイナー路線の楽曲ながら、シングルカットされリリースされました。ミュージックビデオにおけるアメリカ先住民を思わせる衣装や動物との触れ合いは、ジャミロクワイの音楽における原点や、アーティストとしての強い意志を反映している、との評価もあります。日本での発売はイギリスより3ヶ月遅れました。

まとめ

『コーナー・オブ・ジ・アース』は、音楽性と環境問題への意識という、二つの側面からジャミロクワイのアーティストとしての深みを感じさせる作品です。壮大なオーケストラアレンジ、印象的なミュージックビデオ、そして歌詞に込められたメッセージは、リスナーに長く記憶される、名曲としての地位を確立しています。

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