コーンウォールと西デヴォンの鉱山景観

コーンウォールと西デヴォンの鉱山景観：世界遺産に登録された産業遺産

イギリス南西部、コーンウォール州とデヴォン州西部に広がる「コーンウォールと西デヴォンの鉱山景観」は、2006年にユネスコの世界遺産に登録された重要な産業遺産です。この地域は、18世紀から19世紀にかけて盛んだった銅とスズの採掘によって大きく変貌を遂げました。地下鉱山、精錬所、エンジンハウス、鉱山労働者のためのニュータウン、港湾施設、そして関連産業施設などが、19世紀初頭には世界中の銅供給量の3分の2を担うほどの技術革新と経済的繁栄を物語っています。

歴史：スズから銅へ、そして世界へ

この地の鉱業の歴史は、古くはスズの採掘に始まります。16世紀半ばまでは、デヴォン州のスズ生産量はコーンウォール州の25～40％でしたが、両州を合わせた生産量は世界的に見てもそれほど多くはありませんでした。しかし、1540年代以降、コーンウォール州のスズ生産量は飛躍的に増加し、デヴォン州の生産量はコーンウォール州のわずか10分の1程度にまで減少しました。

1800年代後半には、砒素の生産が急増し、コーンウォール東部からデヴォン西部にかけての生産量は当時世界需要の半分を占めるまでに成長しました。19世紀初頭には、蒸気機関の技術革新が採掘技術に革命をもたらしました。リチャード・トレビシックが開発した高圧揚水機関は、より深い鉱脈の採掘を可能にし、鉱業の規模拡大に大きく貢献しました。

この時期から、コーンウォールの伝統的な鉱山労働者たちが他地域に移住し、新たなコミュニティを形成する現象が見られるようになり、この移住は19世紀末にピークを迎えました。現在では、世界中にコーンウォール出身の移民の子孫によるコミュニティが存在し、コーンウォール式エンジンハウスは、イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランド、そしてオーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ、メキシコ、スペインなど世界各地で見ることができます。

1860年の銅価格暴落後、スズ生産が中心となりましたが、コーンウォールの鉱業は徐々に衰退していき、1998年にプール（Pool）のサウス・クロフティ鉱山が閉山されたことで、長い歴史に幕を閉じました。

世界遺産登録地域

世界遺産に登録されているのは、地理的に離れていても関連性の深いコーンウォールと西デヴォンの以下の地域です。

St Just鉱山地区
ヘイル港
トレゴニングとグウィニア鉱山地区
トゥレヴァス
ウェンドロン鉱山地区
カンボーンとレッドルース鉱山地区
ウィール・ピーバー
ポートリー港
グウェナップ鉱山地区
ペラン鋳造所
ケナル・ヴェール
セント・アグネス鉱山地区
ラクスリアン・バレー
チャールズタウン
カラドン鉱山地区
タマー・バレー
* タヴィストック

世界遺産登録基準

この世界遺産は、以下の世界遺産登録基準を満たして登録されました。

(2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。
(3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
(4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。

この世界遺産は、単なる鉱山跡地ではなく、産業革命期の技術革新や、世界各地に広がった鉱山労働者たちの歴史、そして地域社会の形成など、多様な側面を反映した貴重な文化遺産となっています。

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