ゴンドラ (船)

ゴンドラの魅力と特性

ゴンドラ（伊: gondola）は、イタリアの美しい都市ヴェネツィアに特有の伝統的な手漕ぎボートです。日本語では「画舫」とも表記され、このボートは長い歴史を持ち、何世紀にもわたってヴェネツィアの主要な交通手段として利用されてきました。現在でも、カナル・グランデの岸と岸を結ぶ渡し船（トラゲット）としての役割を果たしています。

現在のゴンドラの状況

現在、ヴェネツィア市内には約200から300隻のゴンドラが存在し、そのほとんどは観光客向けのタクシーとして利用されています。幾つかはトラゲットや個人用のボートとして運行されていますが、観光客にとってはゴンドラに乗ることが、ヴェネツィアの旅の重要な一部となっています。

形状と特長

ゴンドラは、長さ約11.5メートル、幅1.4メートルと細長い形状をしています。その船体は非対称で、左に立つゴンドリエーレの体重とバランスを取るため、左舷が右舷よりも約25センチメートル長くなっています。また、船の底は縦に湾曲しており、これにより水との接触を最小限に抑え、1本のオールだけで効率的に推進力を得ることができます。

ゴンドラの前端には、鉄製の装飾「フェッロ・ディ・プルーア」があります。この装飾は、ヴェネツィア語では「フェーロ・ダ・プローヴァ」や「ドルフィン」と呼ばれ、舳先を保護すると同時に、装飾としての役割も担っています。さらに、ゴンドリエーレが船の尾に立つ際のバランスを取るためのおもりとしても機能します。

操船技術

操船は、ゴンドリエーレが舳先に立ち、片方のオールのみを使って行われます。一般的なイメージとは異なり、ゴンドラは海底を棒でつついて進むのではなく、推進はオールの押す力によって行われます。ヴェネツィアの水は深いため、棒を用いることはできません。

オールは「オール留め（forcola）」と呼ばれる独特の支えに固定されており、これによりさまざまな操船技術（前進や方向転換、減速など）に対応できます。複雑な形状のオール留めは、オールの位置を調整することで、様々な動きを可能にしています。

ゴンドラの歴史

ゴンドラの歴史は非常に興味深く、特にヴェネツィア共和国時代には、費用削減の一環としてゴンドラは黒く塗装されることが義務づけられました。このため、黒いゴンドラは現在でも一般的になっています。18世紀にはゴンドラの数が数千隻に達したとされていますが、19世紀末以降はモーターボートに取って代わられつつあります。

ゴンドリエーレは男性の職業とされていましたが、2010年には初めて女性のゴンドリエーレが誕生しました。彼女たちは「ゴンドリエーラ」と呼ばれ、ヴェネツィアの伝統に新しい風を吹き込んでいます。その中には、女性でありながら外国人としても初めてのゴンドリエーラとなった人物もいます。彼女は公式にはゴンドラ協会に所属していなかったものの、観光の現場で活躍しています。

まとめ

ゴンドラは、ただの観光名所ではなく、ヴェネツィアの文化と歴史が詰まった特別な存在です。この美しいボートを通じて、訪れる人々はヴェネツィアの魅力を深く体験することができます。

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