ゴールテンダー

アイスホッケーにおけるゴールテンダーとは

アイスホッケーにおいて、ゴールテンダー（通称ゴーリー、ネットマインダー）は、自チームのゴールを死守し、相手チームの得点を阻止する非常に重要なポジションです。サッカーにおけるゴールキーパーと同様の役割ですが、アイスホッケー特有のルールとプレースタイル、そして何よりもゴールテンダーに与えられた特権と装備によって、その存在感は際立っています。

アイスホッケーのゴールはサッカーに比べて狭いため、ゴールテンダーのセーブ率は非常に高く、90%以上を維持する優秀な選手も少なくありません。これは、相手のシュート10本中9本を防ぐという驚異的な数字です。そのため、得点が確実と思える場面でも、あえてペナルティを犯し、ゴールテンダーとの一対一の勝負となるペナルティショットに持ち込む方が、失点のリスクを減らせると判断されることさえあります。

ゴールテンダーの特権

ゴールテンダーには、他の選手にはない特別な特権が与えられています。

特別な用具の使用: ブロッカー、レッグパッド、トラッパーなど、他の選手が使用できない専用の防具を着用できます。また、スティックも形状が異なります。
パックの取り扱いに関する特例: ゴールクリーズ内では、パックを掴んだり、パックの上に倒れ込んだりして、パックの動きを止めることが認められています。ただし、3秒以上保持するとフェイスオフとなります。
ゴールクリーズ内における保護: 相手選手は、ゴールクリーズ内のゴールテンダーに対して、意図的なボディチェックをすることが禁じられています。
ペナルティに関する特例: ペナルティを犯しても、ペナルティボックスに入る必要はありません。代わりに他の選手がペナルティボックスに入ります。また、得点機会を阻止するペナルティの場合、相手チームにペナルティショットが与えられます。

ゴールテンダーの装備

ゴールテンダーは、高速で打ち込まれるパックから身を守るため、特別な装備を着用します。これらの装備は、疎水性の合成皮革やナイロンで覆われ、内部には衝撃吸収材として発泡プラスチックなどが使用されています。

ブロッカー: スティックを持つ手に装着する、四角い板状のグローブです。パックを弾き飛ばす役割を担います。
胸部及び腕部のプロテクター: パックの衝撃から胸部と腕を保護します。
カップ/ジル: 下腹部を保護する防具です。男性用はカップ、女性用はジルと呼ばれます。
レッグパッド: 足を保護する防具です。膝上までを覆い、パックから足を守ります。
マスク: 顔面を保護する防具です。初期は顔の表面だけを覆うものでしたが、現在では頭部全体を覆うものが主流です。金属製のケージで顔を保護します。
パンツ: 大腿部や臀部を保護するためのパッドが施された、専用のショートパンツです。
スケート靴: 他のポジションの選手とは異なり、歯が長く幅広で、安定性を重視した構造になっています。また、踵部分の保護はありません。
スティック: ブレード部分が広く、シャフト下部が櫂（オール）のように広がった形状をしています。この部分はパドルと呼ばれ、守備範囲を広げる役割があります。
トラッパー: スティックを持たない手に装着するグローブです。野球のミットに似ていますが、より大きく、頑丈に作られており、高速で飛んでくるパックを確実にキャッチします。

ゴールテンダーの守備スタイル

ゴールテンダーの守備スタイルは、大きく分けて「スタンドアップ・スタイル」と「バタフライ・スタイル」の2種類があります。

スタンドアップ・スタイル: 立った姿勢でプレーし、パックを弾き飛ばすことを重視します。
バタフライ・スタイル: 膝を閉じ、脚を広げて氷上につけ、パックをブロックします。近年主流となっているスタイルです。

NHLのゴールテンダーに与えられる賞

NHLでは、優れたゴールテンダーに以下の賞が与えられます。

ヴェジーナ賞: 最も顕著な働きをしたゴールテンダーに与えられる賞です。
ウィリアム・M・ジェニングス賞: レギュラーシーズンで最少失点チームのゴールテンダーに与えられる賞です。
Roger Crozier Saving Grace 賞: レギュラーシーズンで最高セーブ率を記録したゴールテンダーに与えられる賞です。

ゴールテンダーによる得点

ゴールテンダーが得点を挙げることは非常に稀ですが、NHLでは過去に12人のゴールテンダーが15回のゴールを記録しています。

アイスホッケーにおいて、ゴールテンダーは単なる守備の要であるだけでなく、試合の流れを左右する重要な役割を担っています。彼らの勇敢なプレーと驚異的なセーブは、観客を魅了し、チームを勝利に導きます。

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