サイバー犯罪条約 (2024年)

サイバー犯罪条約

サイバー犯罪条約（正式名称：国連サイバー犯罪条約）は、2024年12月に国連総会で採択され、国際規模でのサイバー犯罪に対処するために設けられた法的枠組みです。この条約においては、特にロシアと中華人民共和国が主導的な役割を果たし、さまざまな人権の侵害が懸念されています。

1. 歴史的背景

この条約の根底には、2001年に採択された古いサイバー犯罪条約が存在しています。ロシアはこの条約を「不完全」とし、新たに策定する必要があると訴え、2017年に新たな条約の草案を提案しました。その後、2021年5月には2023年を目標として新サイバー犯罪条約の草案作成に関する決議が採択され、続いて2022年にはウィーンでの交渉が開始されました。

当初、ロシアと赤道ギニアがこの決議案を共同提出しており、交渉は難航しました。特に、途上国に対しサイバー犯罪被害の拡大を理由に、インターネット活動への制約を求めるロシアとグローバルサウスの姿勢に対し、欧米諸国は表現の自由を懸念し、慎重な立場をとることが多かったのです。結果として、2024年12月24日に条約が採択され、その後、国内手続を経て締約国になる必要があります。

2. 条約の内容

新サイバー犯罪条約は、締約国に対し、不正アクセスやその他のサイバー犯罪を取り締まる国内法を整備することを求めています。具体的には、重大犯罪に関する具体的な定義を設け、電子証拠を収集し、他国の当局とも共有する義務が課せられています。また、特に発展途上国への技術協力も盛り込まれています。

2.1 第14条に関する懸念

条約の中でも特に注目を集めたのが第14条であり、児童性的虐待に関連する規定が含まれています。国連人権高等弁務官事務所（OHCHR）は、この条項が報道や芸術的表現を不当に検閲する結果を招く可能性があると批判しました。また、条項を厳密に定義しない場合、表現の自由を侵害する危険性があるとして、第14条が持つ問題点に対するグローバルな懸念が高まりました。

一方で、収集された意見の中には、漫画やアニメといったフィクションコンテンツも規制対象とすべきとの提案も出ており、日本を含むいくつかの国が強く反対しました。これにより、日本の文化や表現も影響を受けるのではないかとの懸念が広がっています。

3. 各国の反応

新サイバー犯罪条約に対する反発も大きく、テクノロジー企業を代表する団体や人権団体からは、条約の採択や批准を見送るよう各国政府に求める声が相次ぎました。「人権が十分に保護されない」という意見や、「権威主義的な政権を助長する可能性がある」といった指摘が相次ぎ、特に人権保障の不備が問題視されています。また、国際的な協力を阻害する恐れがあるとの批判もなされています。

4. 今後の展望

日本を含む各国は、条約への批准の是非について慎重に検討を行っており、表現の自由や通信の秘密といった人権が不当に制限されないよう、交渉に取り組む姿勢を崩していないとされています。国際的な枠組みの中で、サイバー犯罪にどう対処するか、その成否が今後の重要な課題となるでしょう。

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