サイレント・ランニング

サイレント・ランニング (Silent Running)

ダグラス・トランブルが監督し、ブルース・ダーンが主演する『サイレント・ランニング』は、1972年に公開されたアメリカのSF映画です。宇宙を舞台に、環境問題や人間の価値観の対立をテーマに描かれており、特に植物の重要性が取り上げられています。日本では1979年にテレビで初放映され、その後ミニシアターでも上映されました。

あらすじ

未来の地球、そこでは自然が消え去り、すべての気候が人工的に管理されていました。植物は絶滅に瀕しており、わずかに残された標本は、土星の周囲に浮かぶ3隻の貨物船の温室ドームで保護されています。『ヴァリー・フォージ』号に乗り込むのは、植物学者フリーマン・ローウェルを含む4人の乗組員。ローウェルだけが植物の価値を強く信じ、地球に緑が戻る日を夢見て、冷たい宇宙の中で日々を過ごしていました。

しかし、仲間の3人は人工的な生活に安住し、植物を守ることに消極的です。長い任務を共にしてきた彼らだが、価値観の対立が次第に浮き彫りになります。そんな中、地球から降りかかった命令は、保護されている植物を核爆弾で破壊し、帰還せよという冷酷なものでした。という命令に対し、他の3人は喜ぶものの、ローウェルはそれを拒否します。彼は仲間を排除し、植物たちを守るために逃亡を決意します。

ローウェルと共に宇宙を旅するのは、自航式ドローンのヒューイとデューイ。彼は彼らに新たなプログラムをインストールし、仲間として再出発します。ドローンたちと共にサバイバルの生活を送りながら、植物の世話に精を出しますが、やがて森が枯れ始め、ヒューイにも損傷が見られるようになります。自責の念から絶望しそうになるローウェルですが、突然の救援通信を聞いて、植物への日照不足を悟ります。必死に照明を装置し、彼はドローンにすべてを託す決断をします。

終局の選択

最終的に、ローウェルはドームを切り離し、自らの犠牲を選びます。彼の選択は植物を守るための壮絶なものでした。孤独ながらも希望を抱くデューイは、植物たちに水をやり続け、生命の承継を託された彼の姿が描かれます。ヒューイと共に自爆し、宇宙に向かって遠ざかるドームの中で、緑を保つための戦いが続いていくのです。

作品の背景

『サイレント・ランニング』は、ユニバーサル・ピクチャーズが1972年に企画した低予算映画の一つです。映画は初めの興行成績が振るわず、その結果として監督のトランブルには経済的な損失が生じたとされています。本作で使用された特殊効果や撮影技術は、当時の技術革新を象徴するものであり、特に植物を守るというテーマが現代にも通じる重要性を持っています。アメリカ海軍の退役空母をモデルにした宇宙船の設定も印象的で、映画の舞台設定にリアリティを与えています。

この作品は、環境への意識や人間と自然の関わりについて深く考察するきっかけとなる、名作としての位置を確立しています。

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