サウスウエスト航空812便緊急着陸事故

2011年4月1日、フェニックス発サクラメント行きのサウスウエスト航空812便（ボーイング737-300型機）が、巡航高度付近で機体の一部が破損し、急減圧に見舞われる事故が発生しました。乗員乗客123名のうち、2名が軽傷を負いましたが、幸いにも死者は出ませんでした。この事故は、機体の構造的な問題が原因で発生したもので、航空業界に大きな衝撃を与えました。

事故の概要

発生日時と場所

2011年4月1日、午後3時58分（現地時間）頃、アリゾナ州上空で発生しました。同機は、高度約10,000メートルを飛行中に急減圧に見舞われました。

事故機

事故を起こした機体は、ボーイング737-3H4型機（登録番号N632SW）で、1996年製造の比較的老朽化した機体でした。事故当時までに、約48,748時間の飛行時間と39,786回の離着陸を経験していました。

事故原因

事故の原因は、機体胴体外板のラップジョイント部分に発生した金属疲労による構造的な破損でした。この破損により、機体に大きな穴が開き、急激な減圧が発生しました。調査の結果、機体の製造過程におけるミスが金属疲労を招いた可能性が指摘されています。また、過去にも同様の箇所に亀裂が発見され、修理されていたことが判明しています。

事故の経緯

1. 離陸と上昇: フェニックスを離陸後、通常通り上昇を続けました。
2. 急減圧発生: 高度約10,000メートル付近で、突然、衝撃音とともに天井パネルが外れ、機内の急減圧が発生しました。
3. 緊急降下: パイロットは直ちに緊急事態を宣言し、高度約3,400メートルまで緊急降下を開始しました。この高度では、酸素マスクなしでも呼吸が可能でした。
4. 着陸: その後、パイロットは最寄りのユマ国際空港に無事着陸しました。

乗客の状況

乗客乗員123名のうち、客室乗務員と非番の航空会社職員の2名が軽傷を負いました。客室乗務員は、減圧時に酸素マスクを着用せずに行動したため、一時的に意識を失い、負傷しました。非番の職員も同様に、救助活動中に意識を失い負傷しました。どちらも、機体が降下中に意識を回復し、空港で手当を受けました。

事故後の対応

機体検査

ユマでの機体検査の結果、胴体に約150cmの穴が開いていることが確認されました。サウスウエスト航空は、自社が保有する同型機80機以上を検査し、うち5機で亀裂が発見されました。事故機はその後修理され、運航に復帰しました。

ボーイング社とFAAの対応

ボーイング社は、737-300/400/500型機の点検を指示するサービス・ブレティンを発行しました。FAAは、離着陸回数の多い737-300型、400型、500型機に対して、接合部の検査頻度を上げるよう求める耐空性改善命令（AD）を発行しました。このADは、離着陸回数に応じて検査時期を定めており、特に30,000回以上離着陸を経験した機体については、定期的な検査を義務付けました。

他の航空会社の対応

ニュージーランド航空やカンタス航空など、他の航空会社も同型機の検査を実施しました。これにより、世界中の同型機の安全性が確認されました。

事故原因の特定

NTSBの調査により、事故は金属疲労による胴体の破損が原因であることが特定されました。この金属疲労は、機体の製造時に発生したミスが原因である可能性が高いと結論付けられました。機体の接合部に沿って亀裂が発生し、それが拡大したことで、今回の事故に至ったと考えられています。

過去の類似事故

この事故の約3年前には、同じサウスウエスト航空の同型機（2294便）で同様の事故が発生しており、構造的な欠陥が問題視されていました。これらの事故を受け、ボーイング社とFAAは、同型機の安全性向上に力を入れることになりました。

まとめ

サウスウエスト航空812便の事故は、機体の老朽化や製造時のミスが原因で発生した構造的な欠陥による事故でした。この事故を教訓に、航空業界は機体の検査体制や安全基準を強化し、より安全な空の旅を実現するための努力を続けています。

サウスウエスト航空812便緊急着陸事故