サクラエビ

サクラエビ：深海の宝石と漁業の課題

サクラ[エビ]は、その名の通り桜のような淡いピンク色をした、深海に生息する小型のエビです。体長は4cmほどで、透き通るような体と赤い色素が特徴的で、この美しい見た目から「桜海老」という名が付けられました。2対の触角のうち、第2触角は体長よりも長く、5対の歩脚のうち2対はハサミ状になっています。また、体表には多数の発光器があり、微弱な発光を行うことが確認されています。

生態と分布

サクラ[エビ]]は、駿河湾を中心に、遠州灘、東京湾、相模灘、五島列島沖などに分布しています。しかし、商業漁業の対象となっているのは主に駿河湾のみです。深海の中層を群れで遊泳し、昼間は水深200～300m、夜間は水深20～50mと、日周鉛直移動を行います。プランクトンやデトリタスを餌とし、一方、ハダカイワシやイカなどを天敵としています。産卵期は5～11月で、メスは一度に800～2300個の卵を産みます。寿命は約15ヶ月と短く、孵化後1年で成熟し、産卵後に死亡します。シラ[[エビ]と外見や生態が似ていますが、分類学的には異なる種です。

駿河湾サクラエビ漁業の歴史と現状

駿河湾におけるサクラエビ漁業は、明治27年(1894年)に偶然の発見から始まりました。本格的な漁業は翌年から始まり、現在では由比港漁協と大井川港漁協が中心となって操業しています。主要な漁期は春(4～6月)と秋(10～12月)ですが、6月11日から9月30日までは禁漁期、冬期は休漁となります。

資源管理のため、1977年には「プール制」が導入され、漁獲量を調整し、水揚げ代金を全船で共有するシステムが確立しました。産地偽装を防ぐため、2020年には「駿河湾産サクラエビ」の認証ラベルが導入されています。しかし、近年は深刻な不漁が続いています。2018年以降、春漁、秋漁ともに大幅な減収となり、漁期が短縮されたり、出漁自体が中止されたりすることもありました。

不漁の原因

不漁の原因については様々な説が提唱されています。黒潮の大蛇行による水温変化、富士川水系の濁りによる影響、乱獲、気候変動などが考えられています。特に、富士川上流の雨畑ダムの堆砂による海底湧水の減少が、サクラエビの生息環境に悪影響を与えているという仮説が注目されています。静岡県は「『森は海の恋人』水の循環研究会」を設置し、原因究明を進めていますが、具体的な対策は依然として課題となっています。また、禁漁区における違法操業や、漁業調整規則の不備なども問題視されています。

サクラエビの利用

サクラエビは、釜揚げ、干物、生食用など様々な形で利用されています。産地周辺では、新鮮な釜揚げサクラエビが販売されています。干物は独特の風味と食感があり、かき揚げや炊き込みご飯などに使われます。台湾でも、天日干ししたサクラエビが様々な料理に使われており、名産品となっています。

まとめ

サクラエビは、その独特の風味と美しい見た目から人気が高い一方、近年は深刻な不漁に悩まされています。資源保護と持続可能な漁業の確立のためには、不漁の原因究明、科学的な資源管理、産地偽装対策、そして関係者間の連携強化が不可欠です。今後の研究と対策によって、この深海の宝石の未来が守られることを願っています。

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