サザエさんバス事件

サザエさんバス事件の概要

「サザエさんバス事件」とは、漫画『サザエさん』の作者である長谷川町子が、自らが創出したキャラクターを無断で使用したとして立川バスを著作権侵害で訴えた出来事を指します。事件は1951年に始まり、その後の法廷闘争が注目を集めました。

事件の始まり

立川バスは1951年5月1日に観光バス部門を設立した際、保有していた観光バス27台に『サザエさん』の登場人物であるサザエ、カツオ、ワカメの頭部のイラストを描くことにしました。この企画は「サザエさん観光」として運行されましたが、長谷川町子からの使用許可は取得していませんでした。この無断使用が、後の訴訟につながることとなります。

長谷川町子の訴え

1970年、長谷川は立川バスに対し、登場人物の絵の使用差し止めを求める請求を行いました。これを受けて、翌1971年には裁判に発展し、長谷川は立川バスに対して損害賠償額として3,672万円を求めました。これは、1台あたりの運行契約に基づいて計算されたもので、年利5%の利息と訴訟費用全額も請求していました。

判決の経緯

1975年5月26日、東京地方裁判所は長谷川の主張を認め、立川バスの観光バスに描かれたキャラクターが著作権法によって保護されることを認定しました。とはいえ、長谷川が求めた1台あたり月3万円の賠償額についてはその根拠がないとして拒否されました。しかし、裁判所は、商品の販売価格の3%をキャラクター使用料基準として、バスの運行収入に基づいて賠償金額を1,824万4,099円と算出しました。

さらに、立川バスは賠償金に加え、5年前に遡って年利5%の金利を支払うことも命じられました。これに関しては長谷川の訴訟費用の請求は認められず、原告と被告でそれぞれ2分の1ずつ負担することとなりました。

事件の影響

この事件は、著作権の重要性とキャラクターの知的財産権に関する理解を深める側面がありました。裁判所は、キャラクターの外観や性格を表現するものとしてその著作物性を認識した一方、具体的なキャラクターの著作物としての位置づけについては言及しませんでした。これにより、クリエイターの権利が守られるべき重要な教訓が得られたといえるでしょう。

まとめ

サザエさんバス事件は、漫画業界における著作権の問題を浮き彫りにする重要な事例です。長谷川町子の訴えは、知的財産権を巡る意識を高め、多くのクリエイターたちにとって自身の作品を守る重要な手段としての裁判の意味を考えさせる出来事となりました。

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