サラン＝レ＝バンの大製塩所からアル＝ケ＝スナンの王立製塩所までの煎熬塩の生産

サラン＝レ＝バン大製塩所とアルケ＝スナン王立製塩所：フランスの塩産業遺産

ユネスコ世界遺産に登録されているサラン＝レ＝バン大製塩所とアルケ＝スナン王立製塩所は、フランスの塩産業の歴史を物語る貴重な遺産です。1982年にアルケ＝スナン王立製塩所が最初に登録され、2009年にサラン＝レ＝バン大製塩所が加わり、現在の名称となりました。両製塩所は、煎熬（せんごう）と呼ばれる、釜で塩水を煮詰めて塩を得る製塩方法を用いていました。

サラン＝レ＝バン大製塩所：中世からの伝統

ジュラ県サラン＝レ＝バンにあるサラン＝レ＝バン大製塩所は、中世に起源を持つ古い製塩施設です。サラン＝レ＝バンは、この製塩業によって繁栄した都市で、12世紀にはすでに2つの製塩所が存在していました。大製塩所は、アモンの井戸と呼ばれる塩井のそばに建設され、地下から汲み上げた塩水を金属製の釜で煮詰める設備が残っています。18世紀には薪の不足という問題に直面しますが、1962年の操業停止まで、近代的な海水塩との競争や戦争被害を乗り越え、長く塩の生産を続けていました。

アルケ＝スナン王立製塩所：ルドゥーの理想都市

ドゥー県アルケ＝スナンにあるアルケ＝スナン王立製塩所は、単なる製塩施設としてだけでなく、著名な建築家クロード＝ニコラ・ルドゥーの都市計画を体現した産業遺産としても注目されています。1770年代、ルドゥーは、薪の豊富なショーの森に位置するアルケ＝スナンに製塩所を建設する計画を立案しました。しかし、塩水は20km以上離れたサラン＝レ＝バンから導管で運ぶ必要がありました。1775年から1779年にかけて建設された王立製塩所は、先進的な産業建築として注目されます。監督官の邸宅を中心とした半円形の配置は、ルドゥーが構想した理想都市の一部であり、未完成ながらもその理念を後世に伝えています。しかし、経済的には期待された成果を収めることができず、1895年に操業を停止しました。

世界遺産登録への道

アルケ＝スナン王立製塩所は、操業停止後、一時的に倉庫などに転用されたのち、文化財指定、そして世界遺産登録へと歩を進めました。1926年には、所有者による建物の爆破事件も発生しましたが、その後、ドゥー県によって買い取られ、現在では未来学研究センターとして利用されています。サラン＝レ＝バン大製塩所も、文化財指定を経て、2002年に世界遺産の暫定リストに登録され、2009年にアルケ＝スナン王立製塩所とともに世界遺産に登録されました。登録基準は、人類の創造的才能を表現する傑作、文化交流の証、歴史上重要な時代の技術集積など、複数の基準を満たしていることが認められました。

製塩方法と登録名

両製塩所における製塩方法は、天日塩とは異なり、大きな平釜で塩水を煮詰める「煎熬」でした。世界遺産の登録名には、この製塩方法が反映されています。英語名は「From the Great Saltworks of Salins-les-Bains to the Royal Saltworks of Arc-et-Senans, the production of open-pan salt」、フランス語名は「De la grande saline de Salins-les-Bains à la saline royale d'Arc-et-Senans, la production du sel ignigène」となっており、いずれも「煎熬塩」の生産を意味します。日本語訳は、文献によって若干の違いが見られますが、いずれも両製塩所における製塩業の歴史的価値を伝えています。

まとめ

サラン＝レ＝バン大製塩所とアルケ＝スナン王立製塩所は、製塩技術、産業建築、都市計画など、様々な側面から歴史的価値を認められた世界遺産です。中世からの伝統的な製塩技術と、近代的な都市計画思想の融合が見られる、非常に貴重な文化遺産と言えるでしょう。

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