サリュート1号

サリュート1号は、宇宙開発史において重要なマイルストーンとなる、ソビエト連邦が建造した世界初の宇宙ステーションです。1971年4月19日、バイコヌール宇宙基地からプロトンロケットによって軌道に投入されました。その名称「サリュート」はロシア語で「敬礼」を意味します。

このステーションは、軍事計画（アルマース）と非軍事計画（DOS）の要素が融合して誕生しました。元々は軍用ステーションとして開発が進められていましたが、政府の早期完成要求に応えるため、非軍事要素を取り入れたDOSステーションとして完成を急がれました。表向きは非軍事用でしたが、実際には軍事目的の任務も遂行したとされます。

サリュート1号の構造は、太さの異なる複数の円筒形モジュールが連結された形をしていました。全長は約13メートル、最大直径は約4メートル、内部容積は約99立方メートル、質量は約18トンでした。電力はソユーズ宇宙船から流用された4枚の太陽電池パネルで供給されました。ステーションは主に四つの区画で構成されています。ソユーズとのドッキングや乗り移りに使う移乗区画、生活・実験を行う主要区画、生命維持装置などを収容する補助区画、そして軌道維持用のエンジンがある機関区画です。機関区画はソユーズ宇宙船の設計に基づいています。

主要な搭載機器には、オリオン1宇宙天文台がありました。これは直径28センチメートルの紫外線望遠鏡を中心とする観測装置で、200～380ナノメートルの紫外線スペクトルを高解像度で取得できました。

サリュート1号は順調に軌道投入されましたが、科学機器部のカバーが分離せず、計画されていた観測の一部が不可能になる問題が発生しました。それでも有人滞在の計画は続行されました。

ステーションへの最初の有人試みは、1971年4月22日のソユーズ10号でした。このミッションは、自動ドッキングシステムの不調により手動でのアプローチが試みられ、一時的な結合（ソフトドッキング）には成功しましたが、完全なドッキングと乗員の移乗はできませんでした。ソユーズ10号はステーションから離脱し、帰還しました。

次に、同年6月6日にソユーズ11号が3人の飛行士を乗せて打ち上げられ、翌7日にサリュート1号とドッキングに成功しました。乗員はステーション内に入り、煙の臭いがする中で一夜を過ごした後、本格的な活動を開始しました。世界初の宇宙ステーションにおける長期有人運用として、地上で大きな注目を集めました。

ソユーズ11号の乗員は、ステーションの制御を行いながら、様々な実験や観測を実施しました。オリオン1を用いた紫外線観測や地球観測に加え、長期宇宙滞在の人体影響に関する医学的調査も行われました。

23日間の滞在を終え、乗員は6月29日にソユーズ11号でサリュートを離れ、翌30日に地球へ帰還しました。しかし、着陸後、カプセル内で乗員全員が死亡している痛ましい事故が発生しました。調査により、大気圏再突入直前にカプセルの空気が抜けたことが原因と判明しました。

この事故を受け、サリュート1号への次期有人ミッションであるソユーズ12号は中止されました。ソユーズ12号は後に、新型ソユーズの安全テスト飛行として実施されました。

ソユーズ11号帰還後、サリュート1号は無人のまま運用が継続され、将来のステーション開発のためのデータが収集されました。設計寿命を超過して運用されましたが、10月に電子機器の故障が発生し、制御を失う危険性が生じたため、1971年10月11日、太平洋上への計画的な大気圏再突入により廃棄されました。

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