サリュート3号

サリュート3号

サリュート3号は、1974年6月25日にソ連がバイコヌール宇宙基地からプロトンロケットを用いて軌道に投入した宇宙ステーションです。表向きはソ連の宇宙ステーション計画である「サリュート計画」の一部とされていましたが、その正体は軍事用のアルマース宇宙ステーション（OPS型）であり、その軍事的な目的は厳重に秘匿されて運用されました。

機体設計

本機はアルマース計画のために開発された機体であるため、先行するサリュート1号（DOS型）とは設計思想や構造が異なっていました。機体側面には電力供給のための2枚の太陽電池パネルを装備しており、データやサンプルを安全に地上へ回収するための分離式回収モジュールも備えていました。サリュートという名称が付けられたのは、アルマースが軍事ステーションであることをカムフラージュするためでした。アルマース計画としてはサリュート2号に続く2機目の打上げでしたが、2号機は軌道投入後まもなく機能停止したため、実用的なアルマースとしてはこのサリュート3号が最初の機体となりました。機体の総重量は約18トンから19トンでした。

主な仕様は以下の通りです。

全長：約14.55メートル
最大直径：約4.15メートル
内部容積（居住区）：約90立方メートル
打上げ時重量：約18,900キログラム
太陽電池パネル：2枚
ドッキングポート：1ヶ所
最大乗員数：3名
メインエンジン：2基
メインエンジンスラスタ推力：400kgf（約3.9kN）

搭載武装

サリュート3号の最も特筆すべき装備の一つは、航空機用のヌデリマン・リーフテル（NR）機関砲でした。口径は23mmまたは30mmと言われています。この機関砲は、ステーションに接近してくる可能性のある敵対的な衛星などに対して使用することを想定した、宇宙空間で使用可能な兵器でした。機関砲の砲身はステーションの長手方向に固定されていたため、照準を行う際は、搭載された照準スクリーンを見ながら、ステーション全体の姿勢を変化させる必要がありました。

ミッション遂行

打上げ後、サリュート3号は当初約219kmから270kmの軌道を飛行し、最終的に約268kmから272kmの高度で運用されました。本機は、地球表面に対して常に同じ方向を向くように設計された最初の宇宙ステーションでした。この精密な姿勢制御を維持するために、50万回を超える姿勢制御スラスタの噴射が行われました。また、搭載された複数の種類の偵察用センサーの性能試験も重要なミッション項目でした。

運用中に、2度にわたりソユーズ宇宙船によるクルーの訪問が計画されましたが、実際にステーション内部へ移乗して活動できたのは1回のみでした。1974年7月にはソユーズ14号がクルーを送り届け、彼らはドッキング後15日間以上にわたりステーションで滞在・作業を行い、その後無事地球に帰還しました。同年8月にはソユーズ15号が次のクルーを運ぼうとしましたが、軌道上での自動ドッキングに失敗し、ステーションへの搭乗は叶いませんでした。

クルーがステーションを離れた後もミッションは継続されました。1974年9月23日には、回収モジュールが機体から分離され、地上への回収に成功しました。また、無人状態のステーションから地上からの遠隔操作によって、搭載されていたNR機関砲を発射する試験も実施されました。

時間の経過とともに、大気による抵抗によってサリュート3号の軌道高度は徐々に低下しました。そして1975年1月24日、本機は地球大気圏へ再突入し、その運用を終了しました。

サリュート3号を訪れた宇宙船とクルーは以下の通りです。

ソユーズ14号（1974年7月3日 - 7月19日滞在）
ユーリー・アルチューヒン
パーヴェル・ポポーヴィチ
ソユーズ15号（1974年8月26日 - 8月28日、ドッキング失敗）
レフ・デミン
* ゲナジ・サラファノフ

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