サリュート5号

サリュート5号（ロシア語: Салют-5、Salyut 5）は、かつてソビエト連邦が運用した宇宙ステーションの一つです。サリュート計画の名の下に進められたこのプロジェクトには、公開された民生用の機体と、秘密裏に進められた軍事用の機体「アルマース」シリーズが存在しました。サリュート5号は、このアルマース軍事宇宙ステーションシリーズの三番目にあたる機体であり、同時にこのシリーズとしては最後の実用機となりました。本来の軍事利用という目的は外部には秘匿され、公式には民生用のサリュート計画の一部として扱われていました。

機体の構造と仕様

サリュート5号は、先行するアルマースシリーズのサリュート3号に構造的に多くの類似点を持っていました。全長はおよそ14.55メートル、最大直径は4.15メートル、居住可能な内部容積は約100立方メートルを誇りました。打上げ時の総重量は約19,000キログラムで、これはおおよそ19トンに相当します。電力は側面に沿って設置された二枚の太陽電池パネルによって供給されました。

ステーションにはソユーズ宇宙船がドッキングするためのポートが一つ備えられており、宇宙飛行士の輸送や一部物資の補給はこのソユーズ船によって行われました。特筆すべき機能として、サリュート5号は回収可能なカプセルを搭載していました。これはステーションで得られたデータや材料サンプルなどを地上に持ち帰るためのもので、後のソユーズミッションによって放出、回収されました。ステーションには地球観測カメラや結晶成長装置といった様々な実験装置が搭載され、宇宙からの地球観測や宇宙環境を利用した科学実験が行われました。

ミッションと運用

サリュート5号は1976年 6月22日、カザフ・ソビエト社会主義共和国にあるバイコヌール宇宙基地から、強力なプロトンロケットによって軌道へと無事打上げられました。打上げとその後の軌道上での運用は、全体として成功裏に進められました。

軌道投入後、サリュート5号には複数のソユーズ宇宙船が訪れました。

ソユーズ21号（1976年7月7日 - 8月24日滞在）：ボリス・ヴォリノフ宇宙飛行士とヴィタリ・ゾロボフ宇宙飛行士が搭乗し、約50日間にわたりステーションに滞在しました。彼らは様々な軍事偵察に関連する任務や科学実験を実施しました。
ソユーズ23号（1976年10月15日）：ビャチェスラフ・ズドフ宇宙飛行士とヴァレリー・ヴェンスキー宇宙飛行士が搭乗しましたが、自動ドッキングシステムに不具合が発生し、ステーションへの接続に失敗。乗組員はステーション内部へ入ることなく地球へ帰還しました。
* ソユーズ24号（1977年2月8日 - 2月25日滞在）：ヴィクトル・ゴルバトコ宇宙飛行士とユーリ・グラツコフ宇宙飛行士が搭乗し、サリュート5号を訪れた最後の有人ミッションとなりました。彼らも軍事および科学的なタスクを遂行しました。

ソユーズ24号の滞在期間中の1977年2月26日には、搭載されていたKSIカプセル（回収カプセル）がステーションから放出され、地上での回収に成功しました。これは、軌道上で得られた重要な成果物を地上へ持ち帰るための手段として、アルマース計画において実証された技術でした。

運用の終焉

サリュート5号の運用は、およそ1年間にわたって続けられました。しかし、ステーションに搭載されていた予備燃料が枯渇し、次に予定されていたソユーズ25号以降の有人ミッションの継続が不可能となったことが判明しました。

これを受け、サリュート5号は運用を終了し、1977年8月8日に軌道から離脱するための操作が行われ、制御された形で大気圏に再突入しました。機体はそのほとんどが大気との摩擦熱によって燃え尽き、地上への落下は最小限に抑えられました。

サリュート5号は、アルマース計画の最終段階を飾る機体として、ソ連の有人宇宙活動における軍事的な側面と、それを秘匿しながら進めるという戦略の一端を担いました。その運用期間中に得られた知見や技術は、その後のソ連およびロシアの宇宙開発、特に長期滞在型宇宙ステーションや偵察衛星技術の発展に貢献したと考えられています。

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