サルスエラ

サルスエラ：スペインの情熱的なオペラ

サルスエラは、スペイン語で書かれた台本と、音楽よりも重視される台詞が特徴的な、スペイン独自のオペラ形式です。大きく分けて、バロック・サルスエラ（1630年～1750年）とロマンティック・サルスエラ（1850年～1950年）の2つの時期があります。

サルスエラの誕生

サルスエラの起源は、1657年に遡ります。劇作家ペドロ・カルデロン・デ・ラ・バルカと作曲家フアン・デ・イダルゴによって制作された喜劇「アポロの月桂樹」が、マドリード郊外のサルスエラ別荘で上演されました。この別荘は、フェリペ4世が狩猟のために建てたもので、サルサ（ブラックベリーの一種）の木々が生い茂っていたことから、その名が付けられました。この別荘が後のサルスエラ宮殿となり、新しい音楽様式の名前の由来となりました。

バロック・サルスエラ

バロック・サルスエラは、神話をテーマにしたものが多く、オペラ形式の歌、当時の流行歌、民族舞踊などが融合したものでした。約100年間流行しましたが、イタリア・オペラの人気が高まるにつれて、徐々に衰退していきました。

ロマンティック・サルスエラ

1世紀の空白期間を経て、スペインのナショナリズムの高まりとともに、サルスエラは再び脚光を浴びます。ロマンティック・サルスエラは、ヘネロ・グランデ（大形式）とヘネロ・チコ（小形式）の2つに分類できます。

ヘネロ・グランデ：2～3幕からなるオペラ形式の作品で、演奏時間が長いのが特徴です。
ヘネロ・チコ：1幕構成の軽歌劇で、一般大衆向けに作られています。演奏時間は1時間程度です。

どちらの形式も、歌と演奏の間に台詞が挟まる形式で、作品の規模や内容は多岐にわたります。高尚な詩的ドラマから、下層階級の人々をコミカルに描いた作品まで、幅広いテーマを扱っています。

サルスエラの魅力

サルスエラは、スペインの文化や歴史、人々の生活を反映した音楽であり、その情熱的なメロディーとドラマチックな展開は、多くの人々を魅了してきました。テノール歌手プラシド・ドミンゴの両親がサルスエラの歌い手であったことや、スペイン系のオペラ歌手にサルスエラの出演経験者が多いことからも、その影響力の大きさが伺えます。

サルスエラの作曲家
アマデオ・ビベス
トマス・ブレトン・イ・エルマンデス
ハシント・ゲレーロ
フェデリコ・チュエカ
フランシスコ・アセンホ・バルビエリ
ヘロニモ・ヒメネス
ホセ・セラーノ
ホアキン・バルベルデ
* ルペルト・チャピ・イ・ロレンテ

料理としてのサルスエラ

サルスエラは、魚介類を使ったスペイン料理の名前でもあります。これは、さまざまな登場人物が歌い交わすサルスエラの賑やかさにちなんで名付けられました。

サルスエラは、スペインの文化と芸術を象徴する、情熱的で魅力的なオペラ形式です。その多様な形式と内容は、時代を超えて多くの人々を魅了し続けています。

日本サルスエラ協会
Palacio de la Zarzuela (Casa Real de España)

もう一度検索