サルワール・カミーズ

サルワール・カミーズは、南アジアに広く見られる民族衣装であり、その構成はシンプルながらも多様なスタイルが存在します。基本的には、シャツを意味する「カミーズ」と、ボトムスである「サルワール」の組み合わせで構成されています。女性の場合、これに加えて「ドゥパッター」と呼ばれる幅広のスカーフを組み合わせることが一般的で、3点セットで着用されることが多いです。

日本では、この衣装は「パンジャビ・ドレス」、あるいは略して「パンジャビ」と呼ばれることが一般的です。この呼び方は、旅行ガイドブック『地球の歩き方』で紹介されたことがきっかけで定着したと考えられていますが、南アジアではこの名称はあまり一般的ではありません。ただし、インドでは「パンジャービー・スーツ」という名称も使われることがあります。この名称は、かつてはパンジャーブ地方でのみ着用されていたことに由来しますが、現在ではインド全土で広く着用されています。

また、パキスタンやアフガニスタンの男性が着用するサルワール・カミーズは、インドでは「パターニー・スーツ」と呼ばれ、女性が着用するサルワール・カミーズと区別されます。これは、パターン人（パシュトゥーン人）の衣装に由来するものです。

サルワール・カミーズのボトムスであるパンツには、様々なシルエットが存在します。ゆったりとしたシルエットの「サルワール」をはじめ、膝から足首にかけてタイトになっている「チューリーダール」、裾がラッパのように広がった「ベルボトム」、そして全体的に下半身にぴったりとフィットするスキニーパンツ（レギンス）などがあります。特にサルワールとチューリーダールは、ウエストが非常に大きく、腰紐でしっかりと結んで着用するのが一般的です。

女性が着用するドゥパッターは、その用途も多岐にわたります。胸のふくらみを隠すために使用されることが一般的ですが、寺院に入る際には髪の毛を覆い隠すために頭にかぶることもあります。また、パーティーなどの場では、ドゥパッターを折りたたんで片方の肩にかけるといったおしゃれな着こなしも楽しめます。

サルワール・カミーズのスタイルは、インド映画の影響を大きく受けることがあります。例えば、2005年に公開された映画『Bunty Aur Babli』では、女優のラーニー・ムカルジーが襟付きのシャツを着用していたことから、襟付きのサルワール・カミーズが流行しました。このスタイルは、映画のタイトルから「バンティー・バブリー・スタイル」として知られています。また、1995年のヒット映画『Dilwale Dulhania Le Jayenge』では、男優のシャー・ルク・カーンがパキスタンやアフガニスタンスタイルのサルワール・カミーズ（パターニー・スーツ）を着用しており、このスタイルがインド人男性の間で流行しました。このように、映画がファッションのトレンドに大きな影響を与えることは少なくありません。

サルワール・カミーズは、その多様なスタイルと着こなし方を通じて、南アジアの人々の生活や文化に深く根付いた衣装であると言えるでしょう。

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