サルヴァトーレ・ジュリアーノ

サルヴァトーレ・ジュリアーノ：シチリアのロビンフッドと恐れられた山賊王

1922年、シチリア島のパレルモ近郊で生まれたサルヴァトーレ・ジュリアーノは、複雑で魅力的な、そして悲劇的な人生を送った人物です。貧しい農家の出身ながら、義侠心と冷酷さを併せ持ち、シチリアの歴史に大きな足跡を残しました。彼は民衆から英雄視される一方で、冷酷な山賊として恐れられ、その生涯は多くの謎に包まれています。

貧しい少年から山賊へ

ジュリアーノは学校を嫌い、12歳から様々な職を転々とするものの、短気な性格が災いし、どの仕事も長続きしませんでした。20歳で解雇されたことをきっかけに、連合国軍の配給制度を利用した闇取引に手を染め、これが彼の人生を大きく変えることになります。1943年、憲兵の検問で小麦を押収され、詰め所に連行される命令を受けた彼は、怒り狂って憲兵2人を射殺、自身も負傷します。この事件を機に、彼は復讐を誓い、山賊の道へと足を踏み入れます。その後、憲兵隊による家族や親戚の大量逮捕を受けると、ジュリアーノは憲兵詰め所を襲撃、さらなる殺害を重ねます。

ロビンフッドと恐れられた存在

山賊となったジュリアーノは、警察や地主を襲撃し、金品や食料を奪いました。しかし、彼は奪った財産を貧しい民衆に分け与えることで、民衆からの支持を得ていきます。「シチリアのロビンフッド」として、民衆のヒーローと化し、彼の山賊団は最盛期には500人にも膨れ上がりました。しかし、その裏では、7年間の活動で149人の殺害、172件の殺人未遂事件を起こすなど、冷酷な一面も併せ持っていました。この矛盾した人物像こそが、ジュリアーノを複雑な存在たらしめているのです。

シチリア独立運動への関与

シチリア独立運動が盛んになった時期、ジュリアーノは独立派に加わり、警察の宿舎襲撃や武器強奪、刑務所の襲撃などに関与します。しかし、最も悪名高いのは1947年5月1日に発生した「ポルテッラ・デッレ・シネストレの虐殺事件」です。この事件では、ジュリアーノ率いる山賊団が、無防備の社会主義者らへの発砲を行い、多数の死傷者を出しました。独立運動後も、山賊活動を継続し、各地の社会党や共産党の支部を襲撃しました。

マフィアとの複雑な関係と最期

政府による山賊一掃作戦が開始されると、ジュリアーノはマフィアとの関係を強めていきます。特にサント・フレーレスなどとの繋がりは深く、他の山賊団を裏切り、その情報を警察に提供することで、自身の勢力を拡大していきました。しかし、マフィアとの関係は常に危うく、最終的にはフレーレスを殺害、マフィアボスを脅迫するまでに至り、マフィアとの対立が深まっていきます。1950年7月5日、ジュリアーノは片腕にして従兄弟であったガスパレ・ピッシェッタの裏切りにより、射殺されました。ピッシェッタは後の裁判でマフィアと警察との癒着を証言するも、マフィアによる報復を恐れて独房で毒殺されたと言われています。

英雄と山賊の狭間で

ジュリアーノの死後、彼は生地では英雄として扱われ、彼の墓は観光地となっています。しかし、その生涯には多くの謎が残されており、アメリカ亡命説なども存在します。2010年には遺体鑑定が行われ、本人である可能性が高いと結論づけられていますが、その生涯と死の真相は、いまだ多くの人々の関心を集めています。映画『シシリアン』など、様々な作品にも題材として取り上げられ、ジュリアーノは今もなお、人々の記憶に刻まれた存在なのです。彼の生き様は、シチリアの歴史、そして人間社会の光と闇を映し出す鏡と言えるでしょう。

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